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令和元年度【311回~326回】


がんセンターセミナー開催記録

会場

宮城県立がんセンター 大会議室

対象者

医学研究者及び医療従事者等

第326回

テーマ

女性医学と婦人科がん診療の接点

開催日時

令和2年3月6日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

大友 圭子(宮城県立がんセンター 婦人科)

概要

エストロゲンは主に卵巣から分泌され、生殖機能だけではなく全身に作用して生体の恒常性維持に重要な役割を担っており、その減少は中高年女性の心血管疾患や骨粗鬆症の誘因となる。婦人科がんにおいては、発がんにエストロゲンが関与する病態もある一方で、治療の経過で卵巣機能不全となりQOLを損なう場合もある。
女性医学は従来の疾患別治療から女性の一生を通した健康管理に視点を拡大して医療を提供することを目的としている。今回は女性医学の視点に基づき婦人科がんについて予防から治療後のfollow upまでを概説し今後当科で取り組むべき課題についても検討する。

第325回

テーマ

Fundamental Use of Surgical Energy (FUSE)
『目から鱗!電気メスの基礎原理と有害事象発生のメカニズム』

開催日時

令和2年2月21日(金) 16:00 ~ 18:00

演者

渡邊 祐介(北海道大学消化器外科学教室Ⅱ)

概要

毎日のように使う電気メス、その原理について考えたことはありますか。電気メスでヒヤッとしたことはありませんか。電気メスに関連する医療事故が報告される中、エネルギーデバイスについて学ぶ機会は非常に限られています。米国消化器内視鏡外科学会(SAGES)により開発されたFundamental Use of Surgical Energy(FUSE)は、エネルギーデバイスについて体系的に学ぶことのできる唯一の教育プログラム。FUSEハンズオンでは、電気メスの基礎から有害事象の起こるメカニズムまで、実践を通して理解を深めていただきます。外科医を目指す研修医からベテラン外科医の先生方、そして手術室看護師や臨床工学技士の皆さんに満足していただける、楽しいハンズオンです。目から鱗の内容が満載、明日からの電気メスの使い方が変わります!

第323回

テーマ

ワンチームで取り組む骨転移診療 -「がんロコモ」の克服にむけて -

開催日時

令和2年2月6日(木) 17:30 ~ 19:00

演者

保坂 正美(宮城県立がんセンター 整形外科)

概要

近年、がん治療の発展に伴い、より長期にがんと付き合っていくことが多くなりました。病気による支障を最小限とし、より快適な生活を送ってゆくためのサポートはがん診療の担うべき大事な使命といえます。「がんロコモ」は「がんとロコモティブシンドローム」の略であり、がん自体あるいはがんの治療によって、骨・関節・筋肉・神経などの運動器の障害が起きて移動機能が低下した状態です。がんの骨転移に伴う症状(痛み、神経障害、病的骨折など)をまとめて骨関連事象(SRE)と呼びます。SREの予防と適切な対処が骨転移診療の重要な目的です。がん患者さんの運動器に関わる問題をチーム医療により解決しようとする動きが全国的に拡大しています。当院での骨転移診療の現況と今後の展望についてお話しいたします。

第322回

テーマ

がん研究におけるフェロトーシス

開催日時

令和2年1月31日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

豊國 伸哉(名古屋大学大学院医学系研究科 生体反応病理学)

概要

鉄なしで生存できる独立した生命体は地球上には存在しないことからもわかるように、生命現象において鉄は根源的な元素である。哺乳類において鉄は欠乏すると貧血をきたすが、逆に過剰鉄は発がんと密接な関係がある。鉄ニトリロ三酢酸投与によりwild-typeラットに発症する腎癌はゲノム変化がヒト癌に酷似する。また、アスベストによる中皮腫発がんにおいても、局所の鉄過剰が極めて重要であることが判明し、瀉血にその予防効果があることを明らかにした。未だ発症はないが、労働環境で危惧されているカーボンナノチューブによる中皮腫発がんもアスベストと同様の病態であることが判明している。さて、2012年の報告を皮切りに新たな制御性壊死としてフェロトーシスferroptosisが注目されている。これは、2価鉄依存性の脂質過酸化を伴う細胞死である。その制御因子としては、cystine/glutamate antiporter(SLC7A11)やGPX4など、多数のものが明らかにされている。これはまさに鉄とイオウのバランスの問題であり、がんの起源を暗示している。このように推論すると、がんは鉄と酸素を使用することに対する一種の副作用とも理解でき、がん細胞はiron addiction with ferroptosis resistanceを獲得している。最近開発されたFe(II)特異的なプローブによればがん細胞は非がん細胞より多量の触媒性Fe(II)を有する。新たな治療戦略として、局所に酸化ストレスを加えることのできる低温プラズマも注目される。

第321回

テーマ

発達障害の基本知識 ~自閉症スペクトラムを中心に~

開催日時

令和2年1月24日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

野村 綾(宮城県立がんセンター 精神腫瘍科)

概要

「発達障害」の用語が児童だけではなく成人にも適用されるようになり、精神科/児童精神科以外の医療現場でもよく耳にするようになった。一方でその使われ方やかかわり方について情報提供される場面はまだ少なく、発達障害の適切な理解が広く周知されているとは言い難いと思われる。今回の講座ではこれからも増え続けると思われる「発達障害」について、自閉症スペクトラムを中心にその基本的な知識、概要をお話ししたい。

第320回

テーマ

前立腺癌治療の現状と今後の課題

開催日時

令和2年1月17日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

川村 貞文(宮城県立がんセンター 泌尿器科)

概要

近年、新規薬剤の登場、ロボット手術の普及、そして画像検査の進歩により前立腺癌治療は大きく変わりつつある。局所ハイリスク前立腺癌については、より積極的に根治治療が行われるようになってきた。
薬物療法については、より早い段階から新規内分泌治療薬や抗がん剤を投与する方向へシフトしつつある。特に、ホルモン療法未治療転移性前立腺癌と非転移性去勢抵抗性前立腺癌の治療戦略が最近のホットな話題である。転移数の少ないオリゴ転移という概念も登場し、治療戦略は一層多様化してきた。画像検査の進歩により転移の評価や診断法も変わりつつある。
このような現状にふれながら、当科の最近の治療成績と今後の課題について述べたい。

第319回

テーマ

正解を目指さない!? 意思決定⇔支援

開催日時

令和元年11月29日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

阿部 泰之(旭川医科大学病院緩和ケア診療部)

概要

意思決定とその支援が目指すところは、「決めること」ではありません。一緒に意思決定のプロセスをたどることで醸成される信頼関係が、目指すところでありアウトカムです。残念ながら、私たちは真の「正解」にたどりつくことはできません。私たちが目指すべきは「これで正解だ」という確信を共有することです。そのためには、きちんと向き合って、その人の価値観を探索しながら、話し合うことです。インターネットの普及により、実際に会って話す機会がますます減っているこの時代にあって、今一度、話し合うことの大切さに、人類は気づかないといけないのかもしれません。
(阿部泰之『正解を目指さない!?意思決定⇔支援 ―人生最終段階の話し合い』(南江堂)より)

第318回

テーマ

1分子解析技術と機械学習の融合によるマルチオミックス解析

開催日時

令和元年11月22日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

谷口 正輝(大阪大学産業科学研究所)

概要

細菌・ウイルスを1個単位で検出・識別するナノポア法と、低分子を1個単位で検出・識別する1分子量子シークエンシング法を開発している。ナノポア法で得られる計測データを機械学習で解析することで、唾液中のA型・B型・A亜型のインフルエンザウイルスを1個単位で高精度に識別できる。ナノポア法は、エクソソームの識別による、がんの早期診断への応用が期待される。1分子量子シークエンサーは、DNA・RNAの塩基配列やペプチドのアミノ酸配列を直接決定できる。また、メチル化シトシンやリン酸化チロシン等の、疾病マーカーを直接読み出すことができる。さらに、この手法は、DNAに取り込まれた抗がん剤を1分子レベルで識別することが可能である。

第317回

テーマ

宮城県立がんセンターにおける肺がん外科診療の現状と今後の展望

開催日時

令和元年11月8日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

阿部 二郎(宮城県立がんセンター 呼吸器外科)

概要

肺がんによる死亡数は世界的に依然高い水準にあります。当院での肺がん手術例数も10年前と比較し年平均30例ほど増加しており、地域の肺がん外科診療において非常に重要な役割を果たしています。しかしながら、昔と比べて肺がんに対する外科治療の成績は本当に進歩しているのかというと残念ながらそうとは言えません。例えば縦隔リンパ節転移陽性例などの術後5年生存率は10年前と比べると相当に改善しています。しかし術後の再発率でみると残念なことに全く改善していません。近年の薬物療法の劇的な進歩の恩恵にあずかって、外科治療の成績もあたかも改善しているように見えているのに過ぎないのです。このように厳しい状況にある肺がん外科治療の現状と、呼吸器外科医が向かっている方向を解説します。

第316回

テーマ

数字で読み解くOnco-cardiology ~心血管病を合併したがん患者のepidemicと多職種連携~

開催日時

令和元年11月1日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

大倉 裕二(新潟県立がんセンター新潟病院 腫瘍循環器科)

概要

がんは好発年齢・性、および危険因子を循環器疾患と共有している。また、がん治療薬は図らずも心血管系を標的にしている。さらに、高齢化と、治療成績の向上に伴う治療期間の延長も相まって、心血管病を合併したがん患者は、わが国ならびに先進国において増加している。
当院の10年間、26,235例の集計では、合併頻度の高い心血管病の上位3つは、心房細動(AF、898例)、心機能障害(621例)、静脈血栓塞栓症(VTE、491例)であった。AFとVTEを合わせると、およそ20人に1人が治療目的の抗凝固療法を検討されていたことになる。
本講演では、当院のがん登録と国立がん研究センターの将来予測推計を用いて、onco-cardiologyの現状と、がん患者における心血管病のnew epidemicに対する課題を数字で読み解いてゆく。さらにoncologic emergencyを乗り切るための多職種連携について考察する。

第315回

テーマ

膵癌の危険因子と早期診断への取り組み ―糖尿病を中心にー

開催日時

令和元年9月13日(金) 17:30 ~ 19:00

演者

正宗 淳(東北大学医学部消化器病態学分野)

概要

膵癌は5年相対生存率が1割にも満たず、固形癌の中で最も難治である。その予後を改善するためには、危険因子を理解し早期発見・早期治療を行うことが鍵となる。糖尿病は膵癌の危険因子であることが知られているが、両者の関係を考える場合には、①糖尿病が膵癌発生のリスクファクターであるか、②膵癌の存在により、糖尿病の発症や血糖コントロールの悪化を認めるか、の二面性があることを念頭に置く必要がある。一方、全国調査などにより、早期膵癌の実態や特徴的画像所見が明らかとなるとともに、実臨床における課題も浮き彫りになってきている。本講演では、糖尿病を中心に膵癌の危険因子と早期診断への取り組みについて、最近のトピックスを交えて概説する。

第314回

テーマ

肺がんの耐性研究から見たがんの可塑性と多様性

開催日時

令和元年9月6日(金)17:30~19:00

演者

片山 量平(公益財団法人がん研究会 がん化学療法センター 基礎研究部)

概要

進行肺がんは今なお難治性であり、年間8万人近い患者が命を落としている。我々は、IRBにて承認された臨床観察研究参加に同意された患者由来の、治療前・後の胸水や生検検体などを用いて治療抵抗性機構の解明を行ってきた。これまでに、EGFR活性化変異やALK融合遺伝子といったドライバーがん遺伝子に対する獲得耐性機構とその克服法候補を明らかにしてきたが、近年では、免疫チェックポイント阻害薬に代表されるがん免疫チェックポイント阻害薬の獲得耐性機構をも明らかにしてきた。本発表では、それら耐性機構について、同一患者内での多様性や腫瘍の可塑性に触れながら最新の研究成果についても紹介したい。

第313回

テーマ

ロボット支援手術を安全に普及させるための組織体制づくり

開催日時

令和元年7月31日(水)17:30~19:00

演者

武中 篤(鳥取大学医学部器官制御外科学講座 腎泌尿器学分野)

概要

本邦では2009年に手術支援ロボットが薬事承認され、2012年に前立腺癌、2016年に腎癌手術が、2018年には、婦人科、消化器外科、胸部外科、心臓血管外科領域の術式においても保険診療が可能となった。今後の急速な普及に向けて安全体制の確立は必須であると思われる。ロボット支援手術は、術中の情報伝達経路や意思決定法が開腹手術、内視鏡手術いずれとも異なり、独自のノンテクニカルスキルが必要である。ま た、学会や各施設における医療安全指針の確立も求められる。日本泌尿器科学会および日本泌尿器内視鏡学会では、ロボット支援手術におけるガイドラインや教育プログラムの策定と共に、2015年よりプロクター制度を立ち上げた。一方、鳥取大学医学部附属病院では、2010年にロボット支援手術を開始するにあたり、低侵襲外科センターという診療科・職種横断的組織を立ち上げ、独自の運用法を導入し、安全な普及に努めてきた。本講演では、ロボット支援手術の特殊性、日本泌尿器科学会・泌尿器内視鏡学会の取組み、鳥取大学低侵襲外科センターの運用法などを紹介した

第312回

テーマ

東北大学病院外科における直腸癌のロボット支援手術の取組み

開催日時

令和元7月23日(火)17:30~19:00

演者

大沼 忍 (東北大学病院 総合外科)

概要

da Vinciによるロボット支援手術は、2012年4月に前立腺癌、2016年4月に腎癌で保険適応となり、2018年4月には、肺癌、縦隔癌、食道癌、胃癌、直腸癌、膀胱癌、子宮体癌、心臓弁膜症に保険適応が拡大された。東北大学では、2011年11月にda Vinci(r) Sが導入され、泌尿器科を中心にロボット支援手術が行われてきた。当科では、2016年5月から臨床試験として直腸癌に対するロボット支援手術を導入し、慎重に症例を積み重ねてきた。その後、2017年12月にda Vinci(r) Xiが導入され、さらに2018年4月の保険適応拡大を受けて、当科における直腸癌に対するロボット支援手術件数は増加傾向にある。本セミナーでは、当科における直腸癌に対するロボット支援手術の現況についてお話しさせていただく予定である。

第311回

テーマ

翻訳異常を認識する品質管理とリボソーム動態制御

開催日時

令和元年7月12日(金)17時30分

演者

稲田利文先生 (東北大学大学院薬学研究科)

概要

遺伝子発現の根幹であるタンパク質合成装置であるリボソーム機能の低下は、不良タンパク質の蓄積やオルガネラの損傷など、広範な細胞機能障害を引き起こす。しかしながら、様々なリボソーム変異に起因するリボソーム病発症のメカニズムは未だ十分理解されていない。我々は、機能欠損変異をもつ異常リボソームや様々な異常mRNAの翻訳によって引き起こされるリボソーム停滞が、細胞の持つ品質管理機構によって認識し解消される分子機構を解析してきた。最近、E3ユビキチンライゲースよって異常なリボソーム停滞が認識され、リボソームのユビキチン化によってリボソームの運命が決定されることを見出し、「リボソームユビキチンコード」を提唱している。本セミナーでは、異常翻訳に対する品質管理の分子機構と生理機能の解析の現状を紹介したい。