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平成29年度【284回~296回】


がんセンターセミナー開催記録

会場

宮城県立がんセンター 大会議室

対象者

医学研究者及び医療従事者等

第296回

演題

脳神経外科医としての43年を振り返って

開催日時

平成30年3月19日(金)時間:17時30分-18時30分

演者

片倉 隆一(当センター 総長)

概要

昭和50年東北大学脳神経外科へ入局直後、脳腫瘍班へ入り、いわゆる「がん医療」に携わることになってから43年が経過しました。この間、抗がん剤の剤型変更の研究に始まり、大学病院在籍中は主に悪性神経膠腫の研究、当センターへ移動後は脳悪性リンパ腫や転移性脳腫瘍の治療が中心でしたので、この3疾患についての私の関わり合いの変遷について紹介させていただきます。

第295回

演題

  1. 宮城県立がんセンターにおける婦人科がんの治療を振り返って
  2. 宮城県立がんセンター泌尿器科の軌跡と展望ー24年を回顧してー
  3. 20余年の放射線診断「業」を振り返って

開催日時

平成30年3月14日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

  1. 田勢 亨 先生(当センター 婦人科)
  2. 栃木 達夫(当センター 泌尿器科)
  3. 松本 恒(当センター 放射線診断科)

概要

  1. 婦人科のスタッフとセンターの皆様のご協力により、24年間婦人科医として働くことができた。これまでの診療を振り返り、予後不良な子宮頸部浸潤腺癌、婦人科癌肉腫、卵巣癌ⅢC期についての取り組みを紹介したい。子宮頸部腺癌は扁平上皮癌に比べて予後不良である。腺癌の治療に手術を含めた集学的治療は、扁平上皮癌の予後とほぼ同じくなり有効であった。婦人科癌肉腫の多くは病理組織学・免疫組織化学・分子生物学から単一幹細胞由来と考えられ、婦人科癌に有効なTC療法は癌肉腫にも極めて有効であった。卵巣癌ⅢC期で初回手術後の化学療法群と初回化学療法後の手術群を比較すると、初回手術後群が初回化学療法群よりも5年生存率が高かった。

  2. 泌尿器科の主要な癌の3種に対して行ってきたことの概略を述べます。
    前立腺がん:名取市前立腺がん検診、前立腺生検方法の改良、根治的前立腺全摘術術式の改良、根治照射、無治療経過観察
    膀胱がん:筋層非浸潤性膀胱がんに対する術前BCG膀胱内注入療法
    筋層浸潤性膀胱がん~局所進行膀胱がんに対する集学的治療 (同時併用化学放射線療法±全摘術 or 膀胱温存療法)腎細胞がんに対する腎部分切除術 阻血・冷却→無阻血・無縫合化への試み

  3. 私は1994年5月に、「青雲の志」を持ちながら当院に望んで赴任しました。 放射線科、特に放射線診断科は性格付けの難しい診療科です。私は診療を開始するに当たって、次のような事柄を念頭において働き始めました。まずは、放射線診断科が病院診療に十分に貢献する、ということ。次いで,医学・医療の進歩に寄与できる何かを考案し、実践し、世の中に発信すること。これについては、今日「頭頸部癌の動注放射線療法」という形で JCOG study が走るようになりました。そして、最後に「地域の中の放射線診断科」を意識しました。今日、当院放射線診断科の診断紹介例は限界までに達しています。 振り返れば、個人的にも診療科としても、やり残したこと、至らなかった点が多々あります。それらは様々な形で次の世代の方々に担っていただけることでありましょう。

第293回

演題

乳癌ホルモン療法をめぐる基礎と臨床研究

開催日時

平成30年2月9日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

佐治 重衡 先生(公立大学法人 福島県立医科大学 腫瘍内科学講座)

概要

本邦で診断される乳癌の約3/4は、女性ホルモンであるエストロゲンに依存して増殖するホルモン受容体陽性乳癌である。1980年代のエストロゲンレセプター (ER) の選択的アンタゴニストであるタモキシフェンの登場と、その後の様々なホルモン療法薬の開発によって治療成績は向上してきた。一方、乳癌に対する分子生物学的研究の知見から、ER関連シグナルへの分子標的治療薬開発も進み、その選択が多彩かつ複雑になってきた。本講演では、乳癌のERをめぐる基礎研究の歴史から、現在の分子標的治療開発までの歩みを概説する。

第292回

演題

乳癌診療の最前線とトランスレーショナル・リサーチ

開催日時

平成30年1月5日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

石田 孝宣 先生(東北大学大学院医学系研究科 乳腺内分泌外科学分野)

概要

乳癌は、女性の悪性腫瘍では最も多く、日本人女性の約11人に1人が罹患する時代となりました。残念ながら、罹患率、死亡数ともに増加の一途を辿っています。こうした背景の中、東北大学では、病理学、分子生物学を基盤にした基礎研究、および検診、疫学、画像診断、手術・薬物療法を中心とした臨床研究、そしてこれらをつなぐホルモン環境を中心としたバイオマーカー研究、ナノテクノロジーなどのトランスレーショナル・リサーチを行って参りました。本講演では、乳癌の現状と、臨床の最前線、およびそれらに関連する各領域の研究をご紹介し、今後の展望について述べさせて頂きます。

第291回

演題

次世代プロテオミクスが拓く医学生物学の新地平:90年来のがんの謎を解く

開催日時

平成29年11月24日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

中山 敬一 先生(九州大学・生体防御医学研究所・ヒトプロテオーム研究センター)

概要

ヒトゲノム解読がなされてから15年近く経つが、生命の基本作動原理の理解には遠く及ばないのが現状である。その最大の理由は、細胞活動の直接の機能分子である「タンパク質」を「大規模に」「高速に」「正確に」測定する手法がないためである。われわれは全タンパク質を絶対定量する次世代プロテオミクス技術 (iMPAQT) を発明し、がん細胞での大規模な代謝ネットワーク構造の変化 (代謝リモデリング) の全体像を初めて描出することに成功した。この結果、がんにおける代謝シフトは、炭素ソース利用をエネルギー産生から高分子化合物合成へリモデリングする大規模な適応戦略であることが明らかとなり、今までワールブルグ効果として知られていた好気的解糖シフトは、その一部を見ているに過ぎないことが判明した。さらに主要な窒素源であるグルタミン代謝もがんでは大きくシフトしていることを発見した。われわれはこれを「第二のワールブルグ効果」と呼び、そのキー酵素を同定することに成功した。

第290回

演題

膵管内腫瘍における分子異常解明

開催日時

平成29年10月6日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

古川 徹 先生(東北大学大学院医学系研究科病理形態学分野)

概要

膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は粘液を入れた膵管拡張を主徴とし、進行すると浸潤転移を来して予後不良に経過する。IPMNに特徴的な分子異常は知られていなかったが、我々はエクソーム解析によりGPCR信号伝達経路のシグナルメディエーターであるG蛋白αサブユニットをコードするGNASに特異的に変異が認められる事を明らかにした。GNASはIPMNの50%程でcodon 201に限局したホットスポット型の機能亢進性変異を来しているが、通常型膵癌にはGNAS変異は認められない。変異GNASを膵管上皮細胞に発現させると遺伝子発現の大規模な変動が起こり、粘液蛋白遺伝子の発現が亢進する。変異GNASをコンディショナルに発現する遺伝子改変マウスモデルを作成し、変異Krasと同時にPtf1a-Creで膵特異的に発現誘導するとIPMN様腫瘍が発生した。以上より、GNAS変異はIPMNに特異的かつ特徴的な表現型を担う遺伝子異常で有る事が明らかとなった。

第289回

演題

生活習慣病、遺伝子からエピゲノムへ

開催日時

平成29年9月15日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

酒井 寿郎 先生(東北大学大学院 医学系研究科 分子生理学分野・東京大学先端科学技術研究センター)

概要

生活習慣病やがんなどの多因子疾患の解明は21世紀の生物医学の大きな課題である。これらの疾患は遺伝的素因とともに環境因子も大きく関与す る。環境変化などの外来刺激はDNAやヒストンのメチル化などとして遺伝子に化学修飾 (エピゲノム) として記録され、細胞分裂を繰り返しても保 存される一個体の細胞の記憶システムを形成している。エピゲノムは塩基配列を変えず、遺伝子発現を変える環境への適応機構でもあり、生活習慣病とその合併症の発症・進展に深く関与していると考えられている。本講演では、生活習慣病におけるエピゲノムの役割について我々の研究を紹介する。

第288回

演題

放射線療法の考え方と最近の進歩

開催日時

平成29年9月1日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

西村 恭昌 先生(近畿大学医学部放射線腫瘍学部門教授)

概要

放射線治療の進歩としては、大きく3つに分けられる。
  1. 空間的線量分布の改善として、孤立性肺野型肺がんでは定位放射線治療で手術に匹敵する治療成績が示されている。前立腺がんや頭頸部腫瘍では強度変調放射線療法 (IMRT) によって高線量を合併症なく照射できるようになった。ヨードの永久挿入小線源治療も広がり、前立腺がんでは患者が治療法を決定する時代になっている。
  2. 時間的因子の改善としては、全照射期間が局所制御に与える影響が明らかにされ、照射期間の短縮をはかる加速過分割照射の有効性が頭頸部腫瘍、肺癌などで示されている。
  3. 放射線増感法の改善としては化学療法と放射線療法を同時に併用する同時化学放射線療法が多くのがんで標準治療となっている。

第287回

演題

栄養シグナルと幹細胞制御

開催日時

平成29年8月25日(金)時間:17時00分-18時30分

演者

平尾 敦 先生(金沢大学がん進展制御研究所 遺伝子・染色体構築研究分野教授)

概要

近年、成長因子、酸素濃度、糖、ATPなどを感知する栄養・エネルギーセンサーシグナルの分子機構が精力的に研究され、がん治療への応用も進み つつある。白血病幹細胞は、一般的な固形腫瘍とは異なり、解糖系の抑制や低ATP産生状態を呈し、代謝的静止状態を示すことから、白血病幹細胞特有の代謝調節機構の存在が示唆されている。私たちは、白血病幹細胞維持機構を理解する目的で、mTOR複合体やフォークヘッド転写因子FOXOを中 心とした栄養シグナルに着目した研究を進めてきた。同時に、造血微小環境としての栄養環境の異常が、造血幹細胞の自己複製恒常性の破綻と白血病発症に関与することを見いだした。本セミナーでは、これら栄養シグナルが、いかにがんの未分化性、幹細胞性に寄与するか、最近のデータを紹介し議論したい。

第286回

演題

肺癌薬物治療の2つの軸:分子標的治療と免疫治療の可能性

開催日時

平成29年7月28日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

福原 達朗(当センター呼吸器内科 診療科長)

概要

非小細胞肺癌の薬物治療は、急速に進歩し始めた。従来は、プラチナ製剤等の細胞障害性抗癌剤とEGFR阻害薬に代表される分子標的療法が中心 だった。分子標的療法は、該当する症例では生存期間を劇的に延長させるが、耐性化の克服が依然として大きな課題である。新たな軸である免疫 チェックポイント阻害剤は、著効する薬剤に乏しかった扁平上皮癌や喫煙者腺癌において特に効果を発揮する。
単一の変異蛋白質の働きを徹底的に阻害して得られる抗腫瘍効果と、無数の変異蛋白質による強い抗原性が誘導する免疫細胞の抗腫瘍効果は、肺 癌の克服のための重要な鍵となる。本セミナーでは、薬物治療の現状を紹介し、今後の方向性についても議論したい。

第285回

演題

世界最高水準の医療を目指して

開催日時

平成29年6月10日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

浅田 行紀(当センター頭頸部外科 診療科長)

概要

頭頸部外科は生命維持には必須ではないが社会生活を送るうえで重要な臓器で成り立っており、その機能の障害は重篤な社会生活上の障害をもたらす。当科においてはその機能維持のため、予後を担保しながら機能温存を果たす試みを数多くしてきた。代表的なものとして当院形成外科と共同で行った進行喉頭がんに対する新規手術の開発がある。これは従来温存不能とされてきた声帯麻痺を伴う進行喉頭がんの喉頭温存を果たすことが可能になる世界初の手術である。
この手術を含め当科で行っているいくつかの世界もしくは日本初の試みを中心にしながら今後の宮城県立がんセンターの頭頸部外科について報告する。

第284回

演題

タンパク質間相互作用を標的とした in silico 創薬手法の開発と実践

開催日時

平成29年4月14日(金)時間:17時30分-19時00分

演者

演者:田沼 靖一 先生(東京理科大学薬学部生化学教室ゲノム創薬研究センター長)

概要

タンパク質―タンパク質相互作用 (Protein-Protein Interaction; PPI) は生命反応の主幹にあり、その変調、破綻が多くの重篤な疾患の発症原因となっています。このPPIは創薬ターゲットの宝庫ではありますが、そこを人為的に制御できる低分子化合物 (医薬分子) を創製するのは非常に難しいという意見が根強くあります。それは、PPIに対して、現在の創薬手法の主流であるHTS (High Throughput Screening)/CC (Combinatorial Chemistry) の組み合わせでは、十分な薬効を有する化合物を探すことは難しく、しかもその最適化も試行錯誤になってしまうからです。このような問題をブレークスルーするには、in silico 手法を駆使し、ターゲットタンパク質の構造解析データに基づき分子設計できる新たな in silico 創薬戦略を開発することが重要であると考えられます。
私共はタンパク質間相互作用を標的として、“最適医薬分子を創る”という課題に対して、新たな創薬方法論 (COSMOS; Conversion to Small Molecule through Optimized-peptide Strategy) を考案し、それを実装する新しい in silico 分子設計手法を開発しました。そのコンセプトは、「創薬ターゲットタンパク質の Hot Spot に対して、最適結合ペプチドを設計し、その結合座標を再精密化した後に、低分子変換設計から最適医薬分子を創成する」というものであります。本セミナーでは、その戦略の理論と実践について紹介します。