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平成19年度【146回~160回】


平成19年度宮城県立がんセンターセミナー

会場:宮城県立がんセンター大会議室
※医学研究者及び医療従事者を主に対象としております。

1.ナノテクノロジーと癌医療

第146回 平成19年4月25日(水)

演者:多田 寛(宮城県立がんセンター 乳腺科)
演題:ナノテクノロジーと癌医療

近年ナノテクノロジーの発展は目覚ましいものがあり、様々な分野への応用、特に医療分野への応用が期待されている。その技術によって作られた蛍光ナノ粒子 (Quantum dot) は、従来の有機系蛍光色素と比較し、蛍光強度が強い、耐光性が高いなどの優れた蛍光特性を持つ。今回Quantum dotを用いて、マウス乳癌組織内での高分解能蛍光イメージングに成功したので報告するとともに、現在のナノ医療分野の話題について概説する。

2.新規医薬品の創出と開発の道筋

第147回 平成19年5月11日(金)

演者:川上 浩司 先生(京都大学大学院医学研究科 薬剤疫学分野 教授)
演題:新規医薬品の創出と開発の道筋

20世紀末からのバイオテクノロジー技術の急速な進展と、ヒトゲノムの解析が終了したポストゲノム時代において、疾患にかかわる遺伝子や分子を特異的にターゲットとした分子標的療法、核酸医薬、細胞・遺伝子療法、治療的ワクチンなどの生物製剤(バイオロジクス)の研究開発が増加した。本講演においては、国際的な先端医薬の研究開発の状況と開発の道筋、法制度について解説する。

3.プロテオミクスー基礎と臨床をつなぐ橋ー

第148回 平成19年5月25日(金)

演者:近藤 格 先生
(国立がんセンター研究所 バイオインフォマティクス プロジェクトリーダー)
演題:プロテオミクスー基礎と臨床をつなぐ橋ー

国立がんセンター研究所では、治療奏効性、生存・再発・転移を予測可能にするバイオマーカーを開発している。プロテオームはゲノムの機能的翻訳産物であり、がん細胞の個性を直接制御しているため、プロテオーム情報と臨床病理情報を統合的に解析することにより、診断のためのより精度の高いバイオマーカーが開発できると考えている。本発表では、国立がんセンターでのプロテオーム解析の実例を紹介し、バイオマーカー開発への取り組みついて述べる。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

4.がん対策基本法と緩和ケア

第149回 平成19年7月24日(火)

演者:小笠原 鉄郎(宮城県立がんセンター 緩和医療科)
演題:がん対策基本法と緩和ケア

がん対策基本法によって緩和ケアは新たな段階に入ろうとしている。国および地方公共団体は、早期からの疼痛等の緩和、居宅でのがん医療を提供するための連携体制の確保、医療従事者に対するがん患者の療養生活の質の維持向上に関する研修の機会を確保することが義務づけられた。わが国の緩和ケア病棟は3171病床となったが、終末期に限定されたイメージがあった。基本法によって今後は一般病棟、緩和ケア病棟、在宅における緩和ケアのシームレスな提供体制の構築をめざすことになろう。この流れを概観し、今後の緩和ケアのあり方を考えたい。

5.EGFRと関連遺伝子の異常と肺癌治療

第150回 平成19年9月14日(金)

演者:光冨 徹哉 先生
(愛知県がんセンター 中央病院 副院長/愛知県がんセンター 胸部外科 部長)
演題:EGFRと関連遺伝子の異常と肺癌治療

肺癌における上皮成長因子受容体 (EGFR) 遺伝子の突然変異は。EGFRチロシンキナーゼ阻害剤 (TKI) であるゲフィチニブの感受性と強く相関している。EGFR遺伝子変異の種類別の違い、その他のEGFR経路の異常であるKRAS、HER2変異とEGFR-TKI治療の効果の関連も明らかとなりつつある。最近、ほとんど全ての症例に発現する獲得耐性のメカニズムとして、EGFRの獲得性の二次変異に加えてMET遺伝子の増幅の関与が示された。選択を行っていないEGFR-TKIの臨床試練ではnegativeな結果が続いており、遺伝子型によって肺癌TKI治療の個別化をおこなうことが必要である。

6.malignant GISTの症例に関する検討ー臨床病理検討会 (CPC) ー

第151回 平成19年10月10日(水)

演者:野口 哲也(当がんセンター 消化器科)
演題 : malignant GISTの症例に関する検討ー臨床病理検討会 (CPC) ー

7.乳癌診療と臨床研究における病理診断の役割

第152回 平成19年10月26日(金)

演者:津田 均 先生(防衛医科大学病態病理学 准教授)
演題:乳癌診療と臨床研究における病理診断の役割

乳癌診療と臨床研究の分野で病理診断部門の役割が重要かつ多様になってきた。手術可能乳癌における術後病理診断では、HE標本、免疫組織化学から得られる種々の病理所見が、再発リスクを予測することで間接的に、あるいは特定薬剤に対する治療反応性予測や治療適応決定において直接的に、術後全身療法のレジメン決定に必須となっている。中でも重要なものとして腋窩リンパ節転移の有無と転移個数、ホルモン受容体(エストロゲン受容体、プロゲステロン受容体)、HER2、腫瘍の病理学的悪性度(グレード)、腫瘍浸潤径があげられる。

特にホルモン受容体陽性乳癌に対する内分泌療法、HER2陽性乳癌に対するトラスツズマブは高い奏効率を示すことがわかった。分子標的療法、オーダーメイド医療の今後の可能性が期待される。ホルモン受容体、HER2がいずれも陰性の乳癌に対する分子標的療法の確立が待たれる。近年は術前全身療法が見直され、治療開始前の腫瘍からのコア針生検標本におけるホルモン受容体やHER2、グレードの評価が求められることが多い。さらに術前全身療法の効果は病理学的効果判定が重要で、浸潤癌細胞全部が消失してしまう病理学的完全奏効 (pCR) は、患者予後良好の指標となることが示された。

更に、縮小手術の普及により、術中にセンチネルリンパ節転移の診断や切除断端の検索も広く行われている。臨床研究でも多施設共同研究においては病理中央診断の重要性がいわれ、病理診断、グレード、免疫組織化学の判定、治療効果の判定などに組み入れられている。今回、これらの乳癌病理診断の様々な事項について現状と問題点について考えてみたい。

8.疾患プロテオミクスによる新診断技術 肝細胞がんの優れた腫瘍マーカー

第153回 平成19年11月5日(月)

演者:内田 和彦 先生
(筑波大学大学院 人間綜合科学研究科 准教授/MCBI基礎研究所 所長)
演題:疾患プロテオミクスによる新診断技術 肝細胞がんの優れた腫瘍マーカー

プロテオミクスとは、タンパク質の種類・量・状態(修飾/分解)を網羅的に計測し、それらの総和から生命現象を記述することであり、最近では、その中でも疾患タンパク質やバイオマーカーを同定する疾患プロテオミクスが注目されている。血漿・血清タンパク質にはアルブミン・IgGなどが大量に含まれており、ng/mLオーダー以下で存在する診断価値を有するタンパク質をプロテオミクスで解析することは非常に難しい。
また微量ペプチドはアルブミンなどに吸着(マスク)された状態で流血中に存在しているため、バイオマーカーとして同定することは不可能に近い。

我々は、血液中のタンパク質・ペプチドの情報からの病態の正確な評価を確立することを目指して、産官学で定量プロテオミクス技術開発、バイオマーカー探索、アッセイ系の開発を行ってきた。慢性肝炎・肝硬変・肝細胞がんにいたる病態について血清170サンプルを用いて、各サンプルを2次元mHPLCによって1,152分画にわけ、すべてについて定量的MALDI-TOF MS解析を行い、疾患特異的に検出される低分子タンパク質(ペプチド)をMS/MSによって同定した。その結果、得られた新規細胞由来ペプチドバイオマーカーは、従来の腫瘍マーカーであるAFP, DCP (PIVKA II) よりもすぐれた検出精度を有していることが明らかになった。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

9.国立がんセンター東病院における血液・組織バンク

第154回 平成19年11月16日(金)

演者:落合 淳志 先生
(国立がんセンター東病院臨床開発センター 臨床腫瘍病理部 部長)
演題:国立がんセンター東病院における血液・組織バンク

分子標的治療薬の出現により、がん治療の方法が大きく変わりつつある。新しい治療薬の開発において、実際のがん組織における遺伝子や蛋白の変化ならびにその臨床情報を含めて管理し、これら患者検体を用いた医療開発研究研究を発展させることは今後ますます重要になることは明らかである。国立がんセンター東病院において血液・組織バンクの立ち上げを計画し、本年度秋より血液・組織バンクを設立を目的に、現在倫理審査を申請している。今回、この血液・組織バンクの全体像を紹介し、バンク立ち上げおよび運用上の問題点を含め紹介する。

10.演題網羅的遺伝子発現解析におけるマイクロアレイの注意点と可能性

第155回 平成19年11月22日(木)

演者:佐々木 博己 先生
(国立がんセンター研究所 腫瘍ゲノム解析 情報研究部 室長)
演題:演題網羅的遺伝子発現解析におけるマイクロアレイの注意点と可能性

マイクロアレイ技術の誕生から15年が経とうとしている。我々は10年ほど前から導入し、その有用性を検討してきた。マイクロアレイによるゲノム網羅的遺伝子発現解析の癌研究への適用は、大きく3つに分けられる。
①遺伝子の探索的研究 (Genefinding) ②症例・サンプルの分類 (Class discovery) ③予測 (Prediction) である。

①Genefinding としては
1)癌細胞を見つけるマーカーの同定
2)異常シグナルネットワークの同定
3)病理学的発現プロファイリング
4)創薬への情報提供
5)Laser-Microdissection (LMD) との併用による微小環境の把握
6)遺伝子のノックイン・ダウンによるその機能解析
7)エピジェネティックな遺伝子発現変動
8)microRNAの発現解析
などがある。

②Class discoveryや③Predictionでは
1)新しいサブグループの同定
2)予後、治療効果、転移リスク、副作用の層別化判定
などがある。

一方、マイクロアレイ解析における問題点として
1)感度・特異度の不足
2)試料調製のばらつきに伴うデータの変動
3)LMDの再現性
4)遺伝子機能データベースとの不十分な連携
5)統計学との解離
6)アレイプラットホーム間の互換性の低さ
などがある。

高価な割には、有益な情報を与えないという評価は適当ではない。問題点が明瞭となったこれからが、その真価を発揮するものと考える。過去のデータも有用であり、データベースの構築も重要である。本セミナーでは、マイクロアレイの注意点とパワーを解説したい。

11.最近の感染管理の動向ー医療評価機構と医療法改正を中心にー

第156回 平成19年12月19日(水)

演者 :金光 敬二 先生(東北大学感染管理室 室長)
演題 : 最近の感染管理の動向ー医療評価機構と医療法改正を中心にー

12.リン酸化によるSplicing因子Sap155の制御機構と癌

第157回 平成20年1月25日(金)

演者:田沼 延公(当センター 研究所 薬物療法学部)
演題:リン酸化によるSplicing因子Sap155の制御機構と癌

当研究部で現在行っている主に脱リン酸化酵素側から迫った
1)可逆的リン酸化によるSap155制御機構の解析結果を紹介し、短・中期的な今後の研究計画、すなわち
2)splicingを標的とした癌治療法の開発や腫瘍マーカー探索への応用や
3)Sap155と癌幹細胞との関連等
について、最近の話題や出来事を交えつつ概説する予定です。

Sap155は、基本splicing因子として、原則的にすべての遺伝子のsplicingに必須の蛋白です。Splicing因子としての機能に加え、Sap155は、ポリコーム複合体因子としてHox遺伝子群(発生や癌幹細胞に深く関与する)のエピジェネティックな発現制御にも必須である事が明らかになってきました。まず、キナーゼCDK2とホスファターゼPP1の連携によるSap155リン酸化の制御機構に関する最近の我々の知見の紹介から始めようと思っています。

13.がん対策基本法とがん医療の将来像

第158回 平成20年2月9日(土)

演者:武藤 徹一郎 先生(癌研有明病院 院長)
演題:がん対策基本法とがん医療の将来像

がん対策基本法が成立し実施に移され、がんプロフェッショナル養成プランもスタートすることになり、日本のがん医療にもようやく陽光が照り始めたように見える。しかし、実態はどうなのか?

難治がんと呼ばれる高度進行がん、再発がんへの真剣な対応なくして、がん医療が進歩したとは言えないであろう。癌研有明病院における取り組みを通して、がん医療のあるべき姿を語りたい。

14.悪性神経膠腫の治療における新規脳内局所投与法について

第159回 平成20年2月28日(木)

演者:山下 洋二(当センター 脳外科)
演題:悪性神経膠腫の治療における新規脳内局所投与法について
ーConvection-Enhanced Delivery法の基礎から臨床ー

悪性神経膠腫に対して免疫療法、遺伝子治療、分子標的療法などの治療法が試みられているが、治療薬剤の血液脳関門 (BBB) を介した透過性の問題があり、十分な治療効果が得られていない。たとえBBBの透過性が得られたとしても、薬剤による全身合併症の問題があり、薬剤の投与量が制限され、治療効果も制限される。近年、この障害を乗り越える目的で考案されたConvection-Enhanced Delevery (CED) 法が新規薬剤投与法として注目されている。今回、このCED法の基礎から臨床治験の現状について紹介する。

15.難治性婦人科癌に対するアプローチ

第160回 平成20年3月3日(月)

演者:工藤 一弥(当センター 婦人科)
演題:難治性婦人科癌に対するアプローチ

卵巣癌の多くは播種を伴い、初回化学療法が奏功しても、後に獲得耐性癌として再発する。自然耐性癌の増加も予後不良の一因である。自然耐性癌のCGH解析では染色体1q21-q22の増幅を認めたが、獲得耐性癌にはみられず、Microarray解析から薬剤反応性による性質と考えた。婦人科耐性癌に対してもBevacizumabなどの分子標的薬の効果が期待されている。分子標的薬治療を行っている婦人科がんクリニックでの治療成績をあわせて紹介する。