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平成30年度【297回~310回】


がんセンターセミナー開催記録

会場

宮城県立がんセンター 大会議室

対象者

医学研究者及び医療従事者等

第310回

テーマ

がん治療と緩和ケア

開催日時

平成31年3月1日(金) 17時30分-19時00分

演者

井上 彰(東北大学大学院医学系研究科 緩和医療学分野)

概要

緩和ケアの役割は年々拡大しており、終末期ケアのみならず「早期からの緩和ケア」が昨今の世界標準である。そこには、抗がん治療の適切な止め時やアドバンス・ケア・プランニングなど、がん治療医が果たすべき課題も多い。基本的な対症療法についても、緩和ケア研修会等で得た知識をもとに、がん治療医が積極的に実践することが望ましいが、不適切な鎮痛剤の使用や過剰な輸液など、エビデンスを無視した事例が未だに目立つ。がん薬物療法専門医の立場から緩和ケア医に転身した演者から、がん治療医に向けて切実なメッセージを送りたい。

第309回

テーマ

がんセンターの15年を振り返り、新しき頭頸部癌治療を考える

開催日時

平成31年2月21日(木) 17時30分-19時00分

演者

松浦 一登(当センター副院長、頭頸部外科)

概要

頭頸部癌治療において根治が一番の目的であるが、機能障害が治療後のQOLに大きく関わることから、両者を天秤にかけながらの治療法選択となる。2004年に着任して以来、15年間頭頸部癌診療に携わってきたが、この間、外科治療中心の時代から化学放射線療法の普及、分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤の導入といった新しい波が次々とやってきた。こうした治療は耳鼻咽喉科・頭頸部外科医のみでマネージメントすることは不可能であり、チーム医療が不可欠となっている。外科医としては治療の振り子がまた戻ってくると予想しているが、どのような頭頸部癌治療が次世代に求められるのか私見を述べたい。

第308回

テーマ

iPS細胞を活用した希少疾患の病態解明から創薬

開催日時

平成31年2月16日(土) 17時30分-19時00分

演者

戸口田 淳也(京都大学ウイルス・再生医科学研究所/iPS細胞研究所 教授/副所長)

概要

iPS細胞とは分化した体細胞で複数の転写因子を強制発現させることで、遺伝子発現パターンをES細胞の状態に書き換えることによって作製された人工多能性幹細胞です。ヒトiPS細胞樹立の報告から11年が経過し、この間、様々な領域においてiPS細胞の医療応用が推進されてきました。その一つが、患者さんから樹立した疾患特異的iPS細胞を活用して創薬を目指す応用で、iPS細胞から疾病の責任細胞を分化誘導し、疾患の表現型をin vitroで再現することで分子病態を明らかにし、更に創薬のためのアッセイ系を構築し、化合物スクリーニングから治療薬候補を同定するというものです。私達は2012年度より「疾患特異的iPS細胞を活用した筋骨格系難病研究」として、いくつかの難治性疾患に対して研究を展開しており、その一つが進行性骨化性線維異形成症(Fibrodysplasia Ossificance Progressiva、FOP)です。FOPは小児期より筋、筋膜、腱、靭帯といった線維性結合組織内に徐々に異所性骨が出現する疾患で、現在有効な治療法はありません。私達はFOP患者さんから樹立したiPS細胞を活用した研究により、異所性骨化の引き金となるタンパク質としてアクチビンAを同定して、更にその作用を阻害する薬剤としてシロリムスを同定し、現在医師主導治験を行っています。講演では、その経過を紹介し、他の疾患も含めた現況と今後の展望を概説します。

第307回

テーマ

神経ブロックの進歩と多角的鎮痛

開催日時

平成31年2月13日(水) 17時30分-19時00分

演者

山内正憲(東北大学医学部麻酔科学・周術期医学分野)

概要

手術後や緩和医療など様々な場面において,適切な鎮痛を行うと予後を改善することが広く知られるようになった.そこで鎮痛のプロである麻酔科医が,現在取り組んでいる最新の技術とトピックスを紹介する。
  1. 胸郭の痛みに対する末梢神経ブロック
  2. 凍結肩への神経ブロック
  3. 神経ブロックの様々な効果

第306回

テーマ

再発・遠隔転移頭頸部がんに対する薬物療法の開発の歴史および今後の展望

開催日時

平成30年12月28日(金) 17時30分-19時00分

演者

山﨑 知子(当センター頭頸部内科 診療科長)

概要

手術療法や放射線療法の適応がない再発・遠隔転移頭頸部がんの予後は、未治療であれば2-4ヶ月程度と不良である。同対象において薬物療法は、緩和ケア単独と比較し、有意に生存延長とQOL改善をもたらすことが示されており、腫瘍縮小と症状緩和の目的で提示すべき治療法のひとつである。頭頸部癌における薬物療法の開発の歴史と、現在行われている各種治験、今後の展望について述べたい。

第305回

テーマ

がん診療における腫瘍循環器学(Onco-Cariology)の重要性とその役割

開催日時

平成30年12月14日(金) 17時30分-19時00分

演者

向井 幹夫(地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター 成人病ドック科 主任部長)

概要

がん診療の進歩はめざましくがん患者の生命予後は改善する一方で、がんに合併する循環器疾患や免疫療法などの新しいがん治療に伴う心血管系合併症が増加している。そこで、腫瘍専門医と循環器専門医が一同に介する日本腫瘍循環器学会が創設され「がんと循環器のおける新しい関係」が始まった。本講演では、がん診療において腫瘍循環器医が果たす役割とその重要性について概説する。

第304回

テーマ

多発性骨髄腫の治療の進歩と当院の現状

開催日時

平成30年12月7日(金) 17時30分-19時00分

演者

原﨑 頼子(当センター血液内科 診療科長)

概要

多発性骨髄腫は, 以前は治療選択肢が少なく, 予後不良な疾患であった。最近, 新薬の発売が相次ぎその予後は改善している。多発性骨髄腫の最近の治療の進歩について概説する。また, 当院の多発性骨髄腫治療の現状を報告し, 今後の方向性について考察する。

第303回

テーマ

肝細胞癌のインターベンション治療、C型慢性肝障害の最新治療、肝転移のインターベンション治療

開催日時

平成30年11月30日(金) 17時30分-19時00分

演者

鈴木 眞一(当センター消化器内科 診療科長)

概要

慢性肝疾患による肝予備力不良例が多く、全身化学療法の適応となることが少ない肝細胞癌においては、従来より局所制御のためのインターベンション治療が発達している。これらインターベンション治療の原理と実際、および当院における肝細胞癌の生存率の変遷について概説する。次にC型慢性肝障害の最新治療に関し、当院における治療成績について概説する。最後にインターベンション治療の肝転移への適応例につき述べる。

第302回

テーマ

がんゲノム研究とがんゲノム医療の実装:何が貢献できるか?

開催日時

平成30年11月2日(金) 17時30分-19時00分

演者

河野隆志(国立研究開発法人 国立がん研究センター研究所 ゲノム生物学研究分野 分野長/先端医療開発センター(EPOC) ゲノムTR分野 分野長/がんゲノム情報管理センター(C-CAT) 情報利活用戦略室 室長)

概要

がんゲノム研究は、治療や診断に役立つ標的分子の同定に大きな役割を果たしてきた。発表者は、肺がんや乳がん・婦人科がんのゲノム研究を行う中で研究成果の橋渡しにチャレンジしている。また現在、日本では、次世代シークエンサーを用いた遺伝子パネル検査の保険診療という形で、がんゲノム医療が一歩進もうとしている。自身も、そのひとつである「NCCオンコパネル検査」の開発という形でそれにかかわって来た。自身の取り組みを紹介し、今後の展望について議論したい。

第301回

テーマ

がんゲノム医療の実施に向けての体制と課題

開催日時

平成30年10月5日(金) 17時30分-19時00分

演者

西田 俊朗(国立研究開発法人 国立がん研究センター 中央病院)

概要

私は、これまで消化管間質腫瘍(GIST)と言う希少がんの原因解明と臨床開発に携わってきた。KIT・PDGFRA遺伝子変異の発見を機に、これらを標的とする分子標的治療が開発された。最近では、これら遺伝子変異以外にもBRAF, SDH, NF1, ETV6-NTRK3等様々な遺伝子変異が報告されており、ESMOのGISTガイドラインでも、治療に当たっては遺伝子変異検索をすることが強く推奨されている。
一方、2010年代に臨床現場でも次世代シークエンサー(NGS)を使われるようになり、がん医療におけるクリニカルシークエンスの重要性が認識されるようになった。現在、本邦では、がんゲノム医療を保険診療下でやっていく仕組みとして、「がんゲノム医療中核拠点病院」や「がんゲノム情報管理センター」を中心に、政府主導で体制整備が進んでいる。今回、この背景と現状、そして方向性と今後の課題に向けた取り組みをご紹介したい。

第300回

テーマ

食道癌治療の最前線

開催日時

平成30年9月28日(金) 17時30分-19時00分

演者

亀井 尚(東北大学大学院医学系研究科外科病態学講座 消化器外科学分野)

概要

食道癌に対する治療は手術、放射線治療、化学療法、内視鏡治療を組み合わせた集学的治療が行われ、成績向上が図られているが、低侵襲治療、QOL維持を目指した治療が工夫されて発展してきた。本邦では、治療の柱が手術であることには変わりがないが、高度侵襲を伴う食道切除術に対して、胸腔鏡下手術をはじめとする低侵襲手術が広く行われるようになっており、最近ではロボット補助下手術も行われている。一方、食道温存を目指した、手術以外の治療として、根治的化学放射線療法や光線力学療法(PDT)などについても知見が集積され、日常診療に組み込まれている。本セミナーではここ20年で大きく変化した食道癌治療について概説する。

第299回

テーマ

次世代シークエンサーとがん医療

開催日時

平成30年8月31日(金) 時間:17時30分-19時00分

演者

安田 純(当センター 発がん制御研究部 部長)

概要

がんはこの数十年の研究から「ゲノムの疾患」という考え方が定着した。30億塩基対のヒトゲノム中に、がんを引き起こすような遺伝子異常が発生し、浸潤・転移能の獲得や、治療抵抗性を示すことがその本態である。分子標的薬剤の開発の進展と、次世代シークエンサーによるがんのゲノム診断技術の進歩によって、がんを惹起するドライバー変異に対して適切な抗がん剤を投与すればこれまで経験されなかったような顕著な治療効果が得られる症例が出現してきた。また、近年注目されている免疫チェックポイント療法も、がんのゲノム異常が高度に蓄積している症例に有効性が高い。
本セミナーではこうしたがん医療に資するゲノム解析技術の原理やゲノム情報解析技術について概説する。


第298回

テーマ

ロボット手術の現状と未来

開催日時

平成30年7月13日(金) 17時30分-19時00分

演者

荒井 陽一(当センター 総長)

概要

手術ロボットの導入は、開放手術だけでなく低侵襲手術として定着している腹腔鏡手術にも大きな変革をもたらしつつある。泌尿器科領域では前立腺全摘術、腎部分切除術が保険適用となっていたが、今年4月には7つのがんを含む、!2種類の手術が、一挙に保険適用になった。今後、外科領域で急速に普及すると予想される。本邦ではすでに前立腺全摘術の3分の2以上がロボット支援下で実施されている。ロボット手術のメリットは、出血の少ない拡大視野で繊細かつ正確な手術操作を可能にする点である。講演では東北大学病院で実施されているロボット手術の実際について映像を交えながら紹介し、その将来を展望したい。


第297回

テーマ

ゲノムバイオマーカーに基づくがん最適化医療

開催日時

2018年7月6日(金) 17時30分-19時00分

演者

土原 一哉 先生(国立がん研究センター 先端医療開発センターゲノムTR分野長)

概要

ゲノム変異によるがん化メカニズムの解析は基礎研究の領域に長くとどまっていたが、分子標的薬と次世代シークエンサーの登場により状況は劇的 に変化した。多くの分子標的薬は変異により活性化した酵素を特異的に阻害することで臨床的効果を挙げる。各種のがんの変異プロファイルに依拠 した標的分子の検索はいまや治療薬の探索だけでなく、実地診療における治療選択にも必須となり、効率がよく信頼性も高い各種の遺伝子検査パネ ルが開発され、米国での薬事承認に続き日本でも臨床的有用性が検討されている。さらにがんの変異プロファイルそのもの(tumor mutation burden)が免疫チェックポイント療法の有望な指標となることも示され、バイオマーカーとしてのゲノム情報の重要性はより増している。こうした 背景のもと各国でがんゲノム検査とそれに基づく治療選択の実地診療への導入が図られている。日本では平成29年度末にがんゲノム医療中核拠点病 院と連携病院が指定され、全国規模で良質なゲノム医療を提供する体制が始動した。検査前後の患者への十分な説明、適切な検体の準備、精度管理 された検査、専門医による臓器横断的な診断、二次的所見としての生殖細胞系列変異への対応、臨床ゲノムデータの収集と活用など、広範な議論を もとに設計されたシステムは特に患者保護に重点を置いたものである。一方、ゲノム診断によって選択可能な承認薬の適応範囲はまだ限られてお り、治療機会の拡大が喫緊の課題である。新規治療薬の治験の活性化や承認申請時のコントロールデータの提供につながるレジストリの構築もあわ せて進める必要がある。