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平成20年度【161回~176回】


平成20年度宮城県立がんセンターセミナー

会場:宮城県立がんセンター大会議室
※医学研究者及び医療従事者を主に対象としております。

1.臨床応用を迎えたエピジェネティクス

第161回 平成20年4月25日(金)

演者:牛島 俊和 先生(国立がんセンター研究所 発がん研究部 部長)
演題:臨床応用を迎えたエピジェネティクス

DNAメチル化異常に代表されるエピジェネティック異常は、突然変異同様に、細胞分裂に際して複製される。一見正常に見える組織に蓄積したDNAメチル化異常ほりようした発がんリスク診断、がん細胞特異的なDNAメチル化異常を利用したがん細胞の検出、更に、薬剤反応性や予後予測が、臨床応用の段階を迎えつつある。FDAで認可された脱メチル化剤の治験も我が国で始まり、エピジェネティック治療も現実のものとなりつつある。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

2.サイバーナイフによる脳腫瘍、頭頸部がんの治療

第162回 平成20年5月23日(金)

演者:宮崎 紳一郎 先生(日本赤十字社医療センター サイバーナイフセンター)
演題:サイバーナイフによる脳腫瘍、頭頸部がんの治療

金属フレームで頭蓋骨を固定する従来のガンマナイフに代表される定位放射線治療frame-based radiosurgeryは頭蓋内腫瘍に対する有効な治療手段としての地位を築いている。サイバーナイフ (CK) による定位放射線治療はframe固定が不要で、治療計画時と実際の治療時両方のdigital skull imageをコンピュータとロボットが一致させることで照射精度を保つimage-guided radiosurgeryで、治療対象が動いても対応してロボットがこれを追いかけて正確に治療が遂行されるシステムを備えている。繰返して正確な分割照射fractionが可能であり、治療範囲は頭蓋内に限られず頸椎、頭頸部腫瘍にも適応できる。脳内病変と比較にならないほど体積の大きい事の多い頭頸部腫瘍治療では3日間3分割など分割照射を活用することによって、より高い治療効果、安全性が保障される。現在までに経験した脳腫瘍、頭頸部がんのサイバーナイフ低分割定位放射線治療 の代表症例と追跡治療成績を提示する。サイバーナイフ低分割定位放射線治療は、今後これらの治療で有効な治療手段の1つになると思われる。さらに頭頸部外科腫瘍医、脳神経外科医、放射線科治療医の協力により治療の適応などの充分な議論が肝要と思われる。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

3.造血幹細胞移植の現状と今後

第163回 平成20年6月13日(金)

演者:奥田 光崇 先生(宮城県立がんセンター 血液内科)
演題:造血幹細胞移植の現状と今後

造血幹細胞移植は、難治性血液腫瘍を完治に導く治療として有用であるが、造血系のみならず免疫系も入れ替えるというダイナミックな治療であり、それゆえの合併症は大きな問題である。一方、移植によって完治がもたらされるのは、強力な化学・放射線療法による移植前処置の効果だけでなく、ドナーリンパ球による腫瘍細胞の排除 (GVL) 効果による。当科の経験から、移植合併症対策の具体例、GVL効果が顕著に示された症例を報告する。
また、GVHDなどの合併症を減らしつつGVL効果を誘導するには、複数さい帯血移植の推進、マイナー組織適合抗原の研究が重要と考えられ、これらについて考察する。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

4.乳房再建手術

第164回 平成20年6月27日(金)

演者:館 正弘 先生(東北大学 形成外科)
演題:乳房再建手術

乳房が片方無くなる、あるいは変形が残ることは女性としてのアイデンティティーの危機である。外科の手術法の変遷とともに乳房再建の方向は変わってきているが、目指す目標は同じである。最小の侵襲で、左右対称な、柔らかい乳房を作ることである。我々が主に行なっている腹直筋の遊離皮弁移植術を紹介する。同時再建や乳腺全摘との組み合わせなど、外科医と形成外科医が協力することにより新しいさまざまな手術が可能である。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

5.放射線治療の晩期有害事象

第165回 平成20年7月11日(金)

演者:松下 晴雄 先生(宮城県立がんセンター 放射線治療科)
演題:放射線治療の晩期有害事象

高齢化社会となった現在、悪性腫瘍に対する放射線治療件数は激増しており、これに伴って放射線治療の有害事象に対する対処方法を備える重要性も増してきている。特に晩期有害事象については難治性であり患者さんのQOLを著しく低下させることが多いが、発症のメカニズム、対処方法いずれに関しても各医療従事者に十分に認識されていないと思われる。今回放射線治療後晩期有害事象に対する治療手段として特に高気圧酸素療法に注目して述べる。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

6.神経芽腫自然退縮の分子機構と悪性化の謎

第166回 平成20年7月25日(金)

演者:中川原 章 先生(千葉県がんセンター 研究局長)
演題:神経芽腫自然退縮の分子機構と悪性化の謎

代表的な小児悪性固形腫瘍である神経芽腫は、1歳以上で発症すると現在でもなお予後が極めて不良であるが、乳児期に発症する腫瘍においては高頻度に自然退縮を起こす。果たして、両者は同じ腫瘍なのか、あるいは異なる腫瘍なのか、これまでの我々の知見をもとに考察してみたい。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

7.HLA領域における潰瘍性大腸炎感受性遺伝子の検討

第167回 平成20年9月12日(金)

演者:野村 栄樹 先生(宮城県立がんセンター 消化器内科)
演題:HLA領域における潰瘍性大腸炎感受性遺伝子の検討

潰瘍性大腸炎 (UC) はその発症にいくつかの遺伝因子、環境因子が関与する多因子疾患であり、連鎖解析の結果、第6染色体短腕にUC感受性遺伝子の存在が示唆されている。我々は、UC患者183例・健常対照者186例を対象に、HLA内外のmicrosatellite markerを用いてassociation mappingを施行したところ、classI領域のcentromere側からclassⅢ領域のtelomere側にかけてのmarkerが強い相関を示し、HLA-B*52と正の連鎖不平衡を認めた。同部位に、UCの疾患感受性遺伝子の存在が強く示唆された。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

8.全ゲノムSNP解析による疾患関連遺伝子同定

第168回 平成20年9月26日(金)

演者:萩原 弘一先生(埼玉医科大学 呼吸器科)
演題:全ゲノムSNP解析による疾患関連遺伝子同定

人の遺伝子総数は約20000であるが疾患との関連が判明している遺伝子は10%に過ぎない。また、ほとんどの疾患はその疾患関連遺伝子が分かっていない。疾患関連遺伝子同定は疾患原因の解明・治療法開発に不可欠の事項である。近年、高密度SNPアレイが利用可能となり全ゲノムSNPデータが容易に検索可能となった。しかしながら、これらのSNPデータを利用して疾患関連遺伝子を同定して行くソフトウエア基盤はまだ開発の端緒に付いたばかりである。疾患遺伝子解析には、人類が歩んで来た歴史を振り返り、遺伝学的に考察することが必須である。本講演では、ホモ接合ハプロタイプ法を用いた家系解析、全ゲノム関連解析手法を紹介する。疾患関連遺伝子同定戦略をいかに構築して行くかを考える一助となれば幸いである。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

9.全身麻酔における最近のトレンド

第169回 平成20年10月10日(金)

演者:高橋 雅彦(当センター 麻酔科)
演題:全身麻酔における最近のトレンド

長らくその臨床使用承認が待たれていた超短時間作用性オピオイド鎮痛薬レミフェンタニルが、昨年ようやく本邦でも使用できるようになった。レミフェンタニルのもつ強力な鎮痛作用は、手術時の侵害受容のほとんどすべてを遮断することができ、かつ血中・組織中の非特異的エステラーゼで速やかに分解されるその特徴的な超短時間作用性は、これまでのオピオイド鎮痛薬で常に懸念されてきた覚醒遅延や遷延性呼吸抑制の問題を払拭した。全身麻酔の方向性に大きな影響えつつあるこの薬剤について、その特徴と使用法について概説する。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

10.本邦における前立腺がん検診の現状と今後の課題

第170回 平成20年11月14日(金)

演者:川村 貞文 先生(宮城県立がんセンター 泌尿器科)
演題:本邦における前立腺がん検診の現状と今後の課題

近年前立腺がん検診は急速に拡大し、2006年度には全国の市町村の71.2%が実施するまでに至った。しかし平成19年度に厚生労働省がん研究班(濱島班)は、PSA集団検診を推奨しないとする指針案を公表した。これに対し、日本泌尿器科学会は検診を推進する立場から前立腺がん検診ガイドラインを発行し、真っ向から対立している。本邦における前立腺がん検診の状況と今後の課題について概説し、実際例として宮城県立がんセンターが中心となって実施している名取市前立腺がん検診の14年間にわたる長期成績について報告する。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

11.造血器腫瘍における薬剤耐性の機序とその診断

第171回 平成20年11月28日(金)

演者:張替 秀郎 先生(東北大学大学院医学系研究科 血液・免疫病学分野)
演題:造血器腫瘍における薬剤耐性の機序とその診断

急性白血病・悪性リンパ腫などの予後は、造血幹細胞移植や分子標的療法の開発により著しく改善しているが、化学療法に限ると治療成績の改善は認められていない。その原因のひとつは薬剤耐性の問題であり、その克服なしに化学療法の治療成績の向上は望めない。今回、薬剤トランスポーターの発現を中心に薬剤耐性の機序について考察したい。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

12.疫学研究とがん対策

第172回 平成20年12月12日(金)

演者:西野 善一(当センター 疫学部)
演題:疫学研究とがん対策

我が国のがん対策推進基本計画では75歳未満のがんの年齢調整死亡率を10年間に20%減少させるという全体目標を設定している。具体的な方策として、たばこ対策を中心とした予防、がん検診による早期発見、全国の患者に最適な医療を提供する均てん化等が考えられる。計画推進のためには科学的知見に基づく対策の企画立案や評価が不可欠であり、疫学の果たす役割は極めて大きい。我が国のがん対策をすすめるために、その現状と課題に関してこれまでの疫学研究の知見に基づき考察を行う。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

13.レトロウイルスベクターを利用したさまざまな研究のアプローチ

第173回 平成21年1月16日(金)

演者:北村 俊雄 先生(東京大学医科学研究所 先端医療研究センター)
演題:レトロウイルスベクターを利用したさまざまな研究のアプローチ

我々のグループはレトロウイルスベクターを利用した効率の良い遺伝子導入法と発現クローニング法を開発し、さまざまな方法論によって研究している。本講演では高力価レトロウイルスを産生するパッケイジング細胞および発現効率の高いレトロウイルスベクターについて紹介し、研究アプローチについて以下の実例を解説する。発現クローニングで同定したMgcRacGAPによる細胞分裂・分化の統合的調節骨髄移植によるMDS/白血病モデルの樹立と遺伝子変異の発現クローニングシグナルシークエンストラップ法で同定したペア型免疫レセプターの解析レトロウイルスベクター技術を利用したバイオテックベンチャーACTGen創設本講演を通じて、研究のアイデアが喚起できれば甚幸である。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

14.がん患者の"良い死"ー医療従事者の職種間における相違の検討ー

この講演は延期となりました。

演者:村川 康子(宮城県立がんセンター 化学療法科)
演題:がん患者の"良い死"ー医療従事者の職種間における相違の検討ー

がんに関わる医療従事者・研究者の目標が、"がんを根絶すること"、であることは言うまでもない。一方、臨床では治癒を望めないがん患者と対峙する機会が多く、何を目指せばよいか苦慮する症例が多い現実がある。本講演では、がん患者の"良い死"について検討し、共に考えてみたい。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

15.がん患者と家族の心の回復力(リジリエンシー):研究の動向

第174回 平成21年2月14日(土)

演者:仁平 義明 先生(東北大学大学院文学研究科 心理学講座)
演題:がん患者と家族の心の回復力(リジリエンシー):研究の動向

リジリエンシー (resiliency) 研究は、発達上問題が起こっても何ら不思議はないだろうと思われるような強い持続的ストレス下にあっても、精神的に健康に成長できた子どもたちが存在するのはなぜか、という疑問に発している。その後、リジリエンシー研究は、さらに広い対象へと拡張されてきた。がんに関わる領域でのリジリエンシー研究は、患者本人やサバイバーの研究だけでなく、家族やその治療に携わる医療者のリジリエンシー研究も行われるようになっている。がん領域でのリジリエンシー研究の現状についても概説する。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。

16.進歩するがん治療と今後の課題

第175回 平成21年2月14日(土)

演者:吉田 茂昭 先生(青森県病院事業管理者 青森県立中央病院長)
演題:進歩するがん治療と今後の課題

最近、わが国でもがん治療に関わる無作為化比較試験の結果が次々と公表されている。胃がん、噴門がん、膵がんなどでは、何れも「拡大手術」の生存率が「標準手術」を上回らないことが示される一方、術後に化学療法を追加する補助化学療法の有効性(生存期間の延長)が明らかにされている。これらの進歩に共通するのは、治療に伴う患者さんのQOLの低下をいかに抑え、良好な治療成績を得るかという点に尽きる。

がんはもはや病院という枠だけの中で捉える病気ではなく、「がんになっても安心して暮らせる街づくり」といった、大きな枠組みの中で、多職種の力を結集して支え合う疾患となっている。本講演では、今後の課題について考えてみたい。

*本セミナーは東北大学大学院医学系研究科講義「がん医科学セミナー(2単位)」を兼ねます。