グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  診療科・部門紹介 >  診療科紹介 >  呼吸器外科 >  呼吸器外科【実施中の治験と臨床研究の紹介】

呼吸器外科【実施中の治験と臨床研究の紹介】


実施中の治験または臨床試験

1.日本肺がん学会 J-CURE

「切除後の非小細胞肺癌に対するアテゾリズマブ術後補助療法の多機関共同前向き観察研究」

解説:肺がんの術後の成績 (再発率や死亡率) は確定したステージによって大きく異なります。30年以上前から、ステージの高い肺がんの方には術後抗がん剤治療を実施することが基本となっていました。しかし、それに使われる薬剤はほとんど変化がなく、効果もそれほど高いものではありませんでした。近年の研究で、ステージの高い肺がん術後の補助療法に、新しい「免疫チェックポイント阻害剤」を使用することが予後を改善するという結果がまとまり、2022年から「アテゾリズマブ」というお薬が国内でも肺がん術後の使えるお薬として保険承認され使用開始されています。
しかし保険診療承認の基礎になった国際試験に参加した日本人は多くはありませんでした。そのため、国内で実際に保険診療として肺がん術後にアテゾリズマブを使用して、結果として成績が向上するかどうかを確認するための臨床研究が「日本肺がん学会」を中心としてスタートしました。当科ではその臨床研究に参加しています。

2. 東北呼吸器外科臨床研究グループ

「すりガラス状陰影主体の肺腺癌に対するPET所見とHigh-Resolution CT所見をもとにした楔状切除(部位的に適さない場合の区域切除を含む)による根治手術の第2相試験(改訂第3版)の長期予後」

解説:「東北呼吸器外科臨床研究グループ」では2007年から、早期肺がん(すりガラス陰影主体)に対して、それまで標準手術として肺を大きく切除していたものを、小さい範囲の切除(縮小手術といいます)で十分なのではないか、という仮説のもとに臨床試験を実施しました。当科では2009年から2010年にかけて6名の方が参加していました。その結果は良好で主要医学雑誌に掲載されています(※1)。
その後、日本の全国規模の多施設共同研究(JCOG肺癌外科グループ)で大規模な試験(JCOG 0804)が行われてこれも良好な結果が得られ(※2)、その結果2022年の肺がん診療ガイドラインが改訂されるに至っています。東北グループの研究は2007年の開始当時は最も先進的ではありましたが、東北地方に限定されたローカルで小規模な研究であったため、肺癌診療ガイドラインに引用されていません。
これらの研究の術後10年の長期予後について、今度はJCOGの報告(※3)が先になり、東北グループの研究は追い抜かれてしまいました。しかし東北グループの研究でも対象患者の10年間の観察の結果、肺癌による死亡はゼロいう大変良好な結果で、対象となる患者さんにはこの様な縮小手術を、自信を持って勧められると考えています。(共同研究担当者より現在論文投稿中です)。


※1 A prospective 5-year follow-up study after limited resection for lung cancer with ground-glass opacity. (Sagawa et al. European Journal of Cardio-Thoracic Surgery 2018)
※2 A single-arm study of sublobar resection for ground-glass opacity dominant peripheral lung cancer. (Suzuki et al. Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery 2020)
※3 Long-term outcome of patients with peripheral ground-glass opacity-dominant lung cancer after sublobar resections. (Yoshino et al, Journal of Thoracic and Cardiovascular Surgery, 2023)

3.JCOG2103 (JCOG肺癌内科グループ/肺癌外科グループ共同研究)

画像上診断困難な胸膜播種を有する臨床病期IVA期 (cT1-2bN0-M1a) 非小細胞肺癌に対する原発巣切除追加の治療的意義を検証するランダム化比較第Ⅲ相試験

解説:現在、当院の呼吸器外科はJCOG肺癌外科グループの正式メンバーとはなっていませんが、呼吸器内科はJCOG肺癌内科グループとなっており、共同して表題の臨床研究に参加しています。肺癌が手術で取り切れない状況というのは幾つかありますが、その1つが「胸膜播種」、つまり癌細胞が胸の広い範囲に飛び散っている状態です。初期のころはCTでもわからないので、手術して胸の中を観察して初めて判明することがあります。この場合は主たる癌の病変の切除は行わずにそのまま閉じてきて、速やかに内科的治療に移ります。そして以後は手術することは無いのが通常でした。しかし様々な経験から、ある程度内科的治療が進んだところで主病変の切除も行ったほうがいいのではないか、という考え方があり、この点について2023年から比較試験 (特定臨床研究) が開始されました。当科で手術を受けられる患者さんのなかに、万一手術中に胸膜播種が判明した場合、この臨床試験への参加をお勧めすることがあります。つまり、手術中に胸膜播種が判明した場合は、そのまま手術を終えて、速やかに回復して頂いた後、呼吸器内科で標準的薬物療法を行います。ある程度治療が進んだところで、再び手術を行って、肺癌の主病変を切除し、以後また薬物療法を続ける、という流れになります。