病理診断科【診療内容】
診療科紹介
病理診断科は病院の片隅にあり、皆様の前に表立って姿を現すことはないが、皆様から提供された生検や手術材料を適切に組織診断・細胞診断し、臨床医とともに最も効果的で副作用の少ない治療法を提案する役目を担っている。皆様にはその候補の中から自分自身やご家族様にとって最善の治療法を得心のゆくまで検討していただきたい。当科は皆様のほうからはまったくみえない裏方役・黒子役であるが、皆様にとってよりよい治療法を決定する一助になれば幸甚である。
[1] 2001年以降のがん治療
図1-5は1986年に研究開発が始まり2001年に認可第1号となったキナーゼ阻害剤Glivecの適用疾患である。2001年以降、このような分子標的薬や免疫チェックポイント阻害剤が次々に登場し、がんの治療はそれ以前のものとは大きく異なるものになった。この20年の過程で病理に要求されることは、良悪性の判定から治療薬の効果予測 (いわゆるコンパニオン診断) へと次第に変化してきた。それに対してはPCR (DNA) 、RT-PCR (mRNA) 、FISH/DISH (DNA) 、免疫染色 (タンパク質) を駆使して、遺伝子検査 (たとえば、肺がんに対してはEGFR , ALK , ROS1 , BRAF , PDL1など) を院内で実施し、治療薬の適否判定を行ってきた。
図1
図2
図3
図4
図5
[2] これからのがん治療
2019年にはがんゲノム医療が始動し、網羅的遺伝子解析やリキッドバイオプシーが臨床導入されると、NGSパネルを使っていかに多くのドライバー変異を一挙に検出するか、また、循環腫瘍細胞やcell free DNAなどの微量核酸をdigital PCRで定量的解析を行う方向がこれからのがんゲノム医療の主軸になった。(図6)
その結果、病理の役割には ゲノム医療のための品質検証された核酸の提供が加わったのである。
その結果、病理の役割には ゲノム医療のための品質検証された核酸の提供が加わったのである。
図6
[3]がん研究とともに
いったんがん細胞ができると、そこには様々な異常現象が起こる。染色体の不安定性、遺伝子の転写・翻訳異常、シグナル伝達異常、遺伝子発現抑制による発がん、遺伝子修復制御異常など、がん細胞のもつ課題は多種多様である。
当院にはがん研究所が併設されているという特長がある。そして、臨床サイドの視点を効率的に研究に反映させ、研究成果を臨床に速やかにフィードバックするための基礎になるのがバイオバンクである。バイオバンクは病院と研究所を結ぶちょうど十字路交差点に位置している。近年のがん治療では前述したがんの本質的な課題がひとつひとつ制御されつつあり、病理とバイオバンクはこれらの治療法研究の一翼を担っている。
当院にはがん研究所が併設されているという特長がある。そして、臨床サイドの視点を効率的に研究に反映させ、研究成果を臨床に速やかにフィードバックするための基礎になるのがバイオバンクである。バイオバンクは病院と研究所を結ぶちょうど十字路交差点に位置している。近年のがん治療では前述したがんの本質的な課題がひとつひとつ制御されつつあり、病理とバイオバンクはこれらの治療法研究の一翼を担っている。