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ホーム >  診療科・部門紹介 >  各部門案内 >  宮城県がん登録室 >  6 届出項目⑪~⑰(診断情報)

6 届出項目⑪~⑰(診断情報)


Q6-1)診断施設の考え方について、教えてください。
 1. 診断施設は、自施設診断か他施設診断のいずれかを選択します。診断施設を判断する場合、がんの治療を開
   始する前に行われた検査であって、がんと診断する根拠となった検査のうち、最も確かな検査を行った施設
   を診断施設とします。
   ① 最も確かな検査を行ったのが自施設…自施設診断
   ② 最も確かな検査を行ったのが他施設(自施設の受診前)…他施設診断
 2. がんを診断する方法(検査)としては、いろいろな方法がありますが、これらの方法を確からしさの順番で
   並べると、次のようになります。
   ① 原発巣の組織診
   ② 転移巣の組織診
   ③ 細胞診
   ④ 部位特異的腫瘍マーカー
   ⑤ 臨床検査(画像診断を含む)
   ⑥ 臨床診断(①から⑤の検査を行わず、医師が症状や経過等から診断した場合)
   ⑦ 不明
 3. 例えば、他施設でCT検査などの画像検査を実施して肺がんと診断し、自施設に紹介され、自施設で生検(組
   織診)を実施して肺がんと診断した場合、次のようになります。
   ① 他施設のCT検査などの画像検査…「臨床検査」に該当し、5番目の確からしさ
   ② 自施設の生検(組織診)…「原発巣の組織診」に該当し、1番目の確からしさ
   ③ 以上から、自施設の生検(組織診)が最も確かな検査であり、診断施設は、「自施設診断」を選択
 4. 最も確かな検査が複数回行われている場合は、時系列で最も早い日に検査を行った施設を診断施設としま
   す。
 5. 自施設で検査機器等がないため、他施設に検査を依頼し、その検査結果をもとに自施設で診断を行った場
   合、その検査は依頼検査と言い、自施設で実施した検査として扱います。CT検査やMRI検査などの画像検
   査は、依頼検査として行われることが多い検査です。なお、依頼検査の場合、その検査を行った施設は届
   出を行う必要はありません。
 6. 自施設で診断後、他施設に紹介し、そこでより確かな検査が行われた場合であっても、届出情報は、他施設
   への紹介までの時点の情報で作成するため、自施設診断とします。
Q6-2)診断施設について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 1. 他施設ですでにがんの治療を開始していたが、再発のため紹介された症例の場合…他施設診断
 2. 他施設からがんと紹介された症例だが、紹介状に詳細な情報がなく、診断の経緯が不明な場合…他施設診断
 3. 患者や家族からの聞き取り等で、がんがあることが判明しているが、紹介状がなく、診断の経緯が不明な場
   合
   ① そのがんが既往歴かつ自施設でがんについての診療をしていない場合…届出の対象外
   ② 他施設でがんが診断されたのか分からず、自施設で検査を行った場合…自施設診断
 4. 救急搬送された症例で、家族から他施設でがんの治療中であることを伝えられたが、自施設ではがんの治療
   をすることなく、そのまま亡くなられた場合
   ① 死亡診断書にそのがんが記載された場合…診断施設は他施設診断とし、備考欄に他施設で治療中である
     ことを記入
   ② 死亡診断書にそのがんが記載されていない場合…届出の対象外
 5. 他施設からがんの疑いで紹介された症例で、他施設ではCT検査を行ったもののがんとは診断せず、がんの疑
   いのままで、自施設では、他施設でのCT検査の所見を確認した上でがんと診断した場合…自施設診断と
   する(他施設ではがんと診断していないこと、自施設ではがんと診断したことから)。
 6. 自施設で生検(組織診)を実施し、胃MALTリンパ腫と診断した症例だが、その後の経過において、数年前
   に他施設で胃MALTリンパ腫と診断されていたことが判明した場合
   ① 他施設で診断した胃MALTリンパ腫と一連(同一)と判断している場合…他施設診断
   ② 他施設で診断した胃MALTリンパ腫とは別と判断している場合、または不明な場合…自施設診断
 7. 他施設からがんの疑いで紹介された症例だが、すでに緩和ケアを開始されている場合
   ① 他施設でがんを診断したと言える場合…他施設診断
   ② 他施設でがんを診断したとは言い難い場合…自施設診断
Q6-3)治療施設の考え方について、簡単に教えてください。
 1. 治療施設は、「初回治療」をどこで行ったのかで判断する項目です。次の5つの選択肢から当てはまるもの
   をひとつ選びます。
   ① 自施設で初回治療をせず、他施設に紹介またはその後の経過不明
   ② 自施設で初回治療を開始
   ③ 他施設で初回治療を開始後に、自施設に受診して初回治療を継続
   ④ 他施設で初回治療を終了後に、自施設に受診
   ⑤ その他
 2. 「初回治療」は、がん登録特有の考え方であり、次のとおりとなっています。詳細については、「全国がん
   登録届出マニュアル」20ページを確認してください。
   ① がんでは、診断後、様々な治療が行われることがありますが、このうち、最初の診断に引き続いて行わ
     れた治療を初回治療と言います。
   ② がん登録では、初回治療のうち、がんの縮小や切除を目的とした治療について登録対象としています。
   ③ がんの縮小や切除を目的としない治療、例えば、痛みや症状への治療については登録対象ではありませ
     ん。
   ④ この初回治療は、必ずしも短期間で終わるわけではないため、どの範囲までの治療を登録するのかが問
     題となります。がん登録では、次の治療を初回治療として扱います。
     (ア) 治療計画として診療録に明記されたもので、その完了までに行われた治療
     (イ) 治療計画として明記されていないが、その施設としては、そのがんに対して通常行われる治療であ
       って、その完了までに行われた治療
     (ウ) 治療計画として明記されていないが、最初の診断に引き続いて行われた治療であって、期待した治
       療効果が得られず、別の治療を開始するまでに行われた治療。ただし、最初の診断から4か月以上
       を経過して開始された治療は含めない。
     (エ) 経過観察を選択した場合は、経過観察を開始した施設に限り、その経過観察を初回治療とみなす
       (治療施設がないことを避けるための便宜上の扱い)。
     (オ) 血液や骨髄のがんの場合、がんによる症状を抑えた状態を「寛解(かんかい)」と言いますが、こ
       の寛解を目標として寛解導入療法が行われ、その結果を踏まえて、その後の治療が選択されます。
       この最初の寛解までに行われた治療、また、この寛解の状態を維持するために行われた治療のすべ
       てを初回治療とします。ただし、最初の寛解後の再燃に対して行われた治療は初回治療には含めま
       せん。
Q6-4)治療施設について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 1. 他施設での手術後、化学療法や放射線療法を目的に紹介された場合
   ① 化学療法や放射線療法が初回治療に含まれるときは「他施設で初回治療を開始後に、自施設に受診して
     初回治療を継続」を選択
   ② 化学療法や放射線療法が初回治療に含まれないときは「他施設で初回治療を終了後に、自施設に受診」
     を選択
 2. 他施設から紹介され、自施設で訪問診療、経過観察、疼痛緩和、看取りを行った場合
   ① 他施設でがんの診断後、がんの縮小や切除を目的とした治療を行わず、直接、紹介された場合…「自施
     設で初回治療を開始」を選択
   ② 他施設でがんの診断後、訪問診療、経過観察、疼痛緩和が行われ、その後、その継続を目的に紹介され
     た場合…「他施設で初回治療を終了後に、自施設に受診」を選択(経過観察は最初に開始した施設だけ
     初回治療の扱いとなるが、「継続」は初回治療の扱いとはならないことに注意)
   ③ 他施設でのがんの診療の内容は不明なまま、紹介された場合…上記の①か②のいずれかに該当するのか
     確認し、いずれかを選択
 3. 自施設で診断し、他施設に紹介して手術を受け、その後、化学療法を別の他施設で行う予定であるが、空床
   待ちのため待機的に入院した場合…「自施設で初回治療をせず、他施設に紹介またはその後の経過不明」を
   選択(初回治療計画とされている治療が行われていないため)
 4. 初回治療計画を変更した場合
   ① 自施設での診断後、患者の意向により経過観察を選択し、他施設を紹介。その後、患者の意向により自
     施設で手術を行った場合…「自施設で初回治療をせず、他施設に紹介またはその後の経過不明」を選択
     (手術を行った時点で初回治療計画の変更があったとみなし、手術前までの情報で届出)
   ② ただし、上記の期間が短い場合には、実質的に初回治療を行っていると考えられることから、「自施設
     で初回治療を開始」を選択
Q6-5)診断根拠について、教えてください。
 1. 診断根拠は、自施設、他施設を問わず、患者さんの全経過を通じて、がんの診断の根拠となった方法(検
   査)のうち、最も確かな検査を選ぶ項目です。確からしさの順番で並べると次のようになり、このうち当て
   はまるものをひとつ選びます。
   ① 原発巣の組織診
   ② 転移巣の組織診
   ③ 細胞診
   ④ 部位特異的腫瘍マーカー
   ⑤ 臨床検査(画像診断を含む)
   ⑥ 臨床診断(①から⑤の検査を行わず、医師が症状や経過等から診断した場合)
   ⑦ 不明
 2. がんを診断する方法(検査)としては、いろいろな方法があり、治療開始前の検査に限定せず、「全経過を
   通じて」というのが大きな特徴です。このことにより、手術の摘出標本の組織診を診断根拠としたり、化学
   療法施行後に行った手術の摘出標本の組織診を診断根拠とすることがあります。
 3. 例えば、他施設でCT検査などの画像検査を実施して肺がんと診断し、自施設に紹介され、自施設で手術を実
   施し、摘出標本の組織診で肺がんと診断した場合、次のようになります。
   ① 他施設のCT検査などの画像検査…「臨床検査」に該当し、5番目の確からしさ
   ② 自施設の摘出標本の組織診…「原発巣の組織診」に該当し、1番目の確からしさ
   ③ 以上から、自施設の摘出標本の組織診が最も確かな検査であり、診断根拠は、「原発巣の組織診」を選
     択
 4. 最も確かな検査が複数回行われている場合は、時系列で最も早い日に行った検査を診断根拠とします。
 5. 細胞診や生検(組織診)はがんの疑いだったが、医師がその結果も含めてがんと診断した場合、診断根拠と
   して扱い、病理検査の結果を病理診断に反映させてください。
 6. がんが直接浸潤した部位からの生検(組織診)により診断した場合には、診断根拠は「原発巣の組織診」と
   なります。
 7. 血液や骨髄のがんの場合、次のようになります。
   ① 骨髄穿刺を行って診断した場合…原発巣の組織診
   ② 血液検査を行って診断した場合…細胞診
 8. 腫瘍マーカーについては、いろいろながんの診断で使われていますが、がん登録では、次の4つの場合につ
   いてのみ、部位特異的腫瘍マーカーとして取り扱います。
   ① 肝細胞癌…AFP高値
   ② 絨毛癌…HCG高値
   ③ 神経芽細胞腫…VMA高値
   ④ ワルデンストレームマクログロブリン血症…免疫グロブリン高値
 9. 自施設で検査機器等がないため、他施設に検査を依頼し、その検査結果をもとに自施設で診断を行った場
   合、その検査は依頼検査と言いますが、自施設で実施した検査として扱います。CT検査やMRI検査などの
   画像検査は、依頼検査として行われることが多い検査です。なお、依頼検査の場合、その検査を行った施
   設は届出を行う必要はありません。
Q6-6)診断根拠について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 1. 他施設からがんと紹介された症例だが、診断の経緯が不明な場合
   ① そのがんが既往歴の場合…届出の対象外
   ② 他施設での診断とは言い難い場合…自施設で診断の根拠となった検査を選択
   ③ 他施設でがんの治療が開始されている場合…自施設で行った検査を選択、検査を行わない場合は不明を
     選択
 2. 他施設でがんの診療を受けているようだが、紹介状がなく、診断の経緯が不明な場合
   ① そのがんが既往歴の場合…届出の対象外
   ② 他施設での診断とは言い難い場合…自施設で診断の根拠となった検査を選択
   ③ 他施設での診断と考えられる場合…自施設で行った検査を選択、検査を行わない場合は不明を選択
 3. 救急搬送された症例で、家族から他施設でがんの治療中であることを伝えられたが、自施設でがんの治療を
   することなく、そのまま亡くなられた場合
   ① 死亡診断書にそのがんが記載された場合…聞き取った情報を踏まえて選択
   ② 死亡診断書にそのがんが記載されていない場合…届出の対象外
 4. 他施設からがんの疑いで紹介された症例で、他施設ではCT検査を行ったもののがんとは診断せず、がんの疑
   いのままで、自施設では、他施設でのCT検査の所見を確認し、がんと診断した場合…「臨床診断」を選択
 5. 救急搬送され、そのまま亡くなられた症例で、家族から他施設でがんの治療中であることを伝えられ、その
   施設に対して問い合わせたところ、手術日、手術の術式、病理診断の結果が判明した場合(ただし、電話で
   の聞き取りのため、診療情報提供書はなし)…「原発巣の組織診」を選択し、備考欄に他施設からの聞き取
   った内容である旨を記載
 6. 前立腺がんで、画像検査とPSA高値をもって前立腺がんと診断した場合…「臨床検査」を選択(部位特異的
   腫瘍マーカーとして取り扱うことができるのは4つのがんに限定されているため)
 7. CTなどの画像検査と生検(組織診)でがんと診断されたが、生検の結果は悪性(またはがん)ではない場合
   …「臨床検査」を選択(生検は行われているものの、この検査結果からがんとは診断されていないため、診
   断根拠とはみなさない)
Q6-7)診断日の考え方について、簡単に教えてください。
 1. 診断日は、がんの治療を開始する前に行われた検査であって、がんと診断する根拠となった検査(最も確か
   な検査)を行った日を指します。この診断根拠、あるいは、最も確かな検査の考え方は、Q6-5の説明のとお
   りです。
 2. 実際の届出では、他の施設から紹介された症例の場合、検査日について詳しく確認することが困難であるた
   め、次のように取り扱います。
   ① 自施設診断の場合(最も確かな検査を行ったのが自施設)…最も確かな検査を行った日(最も確かな検
     査が複数回行われている場合は、時系列で最も早い日)
   ② 他施設診断の場合(最も確かな検査を行ったのが他施設)…当該腫瘍初診日(そのがんについて自施設
     を初めて受診した日)
 3. 診断日は、自施設で検査を行った日か当該腫瘍初診日のいずれかになりますので、空欄、あるいは、不明に
   はなりません。また、検査結果が判明した日ではないことに注意が必要です。
Q6-8)診断日について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 1. 他施設から経過観察を目的に紹介された症例の場合…自施設の初診日
 2. 他施設からがんの診断に関する検査目的で受診した場合(結果は、依頼元の施設が患者さんに説明)…届出
   の対象外(依頼検査として扱う)
 3. 他施設からがんの診断に関する検査目的で受診し、検査結果は、いったん依頼元の施設が患者さんに説明し
   たが、その後、治療目的で自施設に再度紹介され、受診した場合…治療目的で自施設を受診した日
 4. 自施設での超音波検査でがんの診断となり、後日、CT検査を施行し、再度がんと診断したとき…超音波検査
   を実施した日(ともに画像検査で同じ確からしさのため、より早期に実施した日を選択)
 5. 入院中の患者さんががんの疑いがあり、他施設に紹介し、当該施設でがんと診断され、当該施設からの指示
   により自施設でそのままホルモン療法を開始した場合…紹介した他施設から情報提供された日(その日から
   がんとしての診療を自施設で開始したため)
 6. がん以外で入院した患者さんが、入院前に他の施設で受けた検査でがんだと判明し、その結果が伝えられ、
   自施設でがんの治療を行った場合…他施設から情報提供された日(その日からがんとしての診療を自施設で
   開始したため)
 7. 前立腺がん疑いでPSA検査を受けていた患者さんが、あるときPSA検査値の急激な増加があり、前立腺がん
   と診断されて、ホルモン治療を開始した場合…医師が診断する契機となった検査を行った日(がん登録上で
   は、診断根拠としてのPSA検査は、部位特異的腫瘍マーカーではなく、臨床検査の扱いであることに注意)
 8. 大腸ポリープを切除した患者さんで、摘出標本の組織診でがんと判明した場合…ポリープを切除した日
 9. 他施設でがんの治療を受けた患者さんで、がん以外の症状で一度だけ自施設の救急外来を受診。その後、が
   んの経過観察や緩和医療を目的に紹介された場合…がんの経過観察や緩和医療を目的に自施設を受診した日
 10. がんの緩和医療と看取りのための在宅医療を目的に紹介された場合(本人の来院はなく往診のみの場
    合)… 初めて往診を行った日
 11. がんは他施設で治療を受けていて、自施設はがん以外について通院していたが、脱水症状で入院し、入院
    中にがんの薬を処方した場合…がんの薬を処方した日
 12. がんで紹介されたが、最初、家族のみの来院で、後日、患者さんが受診した場合…実際に患者さんが受診
    した日
Q6-9)発見経緯の考え方について、教えてください。
 発見経緯は、がんが診断される発端となった状況を把握するための項目で、特に、がん検診などでがんが発見さ
 れたかどうかを評価することを意図した項目です。自施設か、他施設かを問わず、がんについて初めて医療機関
 を受診した際の状況をもとに判断します。次の選択肢から当てはまるものを選びます。
  ① がん検診・健康診断・人間ドック
  ② 他疾患の経過観察中の偶然発見(他のがんの経過観察中に発見した場合も含みます)
  ③ 剖検発見(死体解剖による発見はもとより、死亡時の画像診断(Autopsy Imaging)による発見も含みま
    す)
  ④ その他(何らかの症状があって受診した場合を含みます)
  ⑤ 不明
Q6-10)発見経緯について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 がん検診でポリープの診断で自施設を受診し、摘出した結果、病理診断でがんと診断された場合…「がん検診・
 健康診断・人間ドック」を選択
Q6-11)進展度の考え方について、教えてください。
 1. がんの拡がり具合を把握するために、画像検査や病理検査などが行われ、その結果をもとに進行度として分
   類します。進行度の分類方法としては、「進展度」や「TNM分類」などがありますが、全国がん登録では、
   進展度を用いています。進展度は、その拡がり具合から次の5つの区分に分けられています。
   ① 上皮内
     がんが臓器の表面にとどまっている状態
   ② 限局
     がんが発生元の臓器にとどまっている状態
   ③ 領域リンパ節転移
     がんが発生した臓器のリンパの流れに沿って、リンパ節に転移した状態
   ④ 隣接臓器浸潤
     がんが発生した元の臓器を越えて周囲の組織や臓器に及んでいる状態
   ⑤ 遠隔転移
     がんが発生した元の臓器から血流やリンパの流れに沿って、遠くの臓器に転移したり、播種といって、
     身体の内部の空間に拡がった状態
 2. 進行度は、治療を開始する前に判定され、治療方法を選ぶ際の判断材料となります。また、切除術を行った
   際には、病理診断によって正確な進行度が得られるため、治療方法の評価などに活用することが可能となり
   ます。全国がん登録では、進展度・治療前と進展度・術後病理学的の2つの進行度を届出項目としていま
   す。
 3. 進展度・治療前は、最初の診断が行われ、初回治療の前までに行われた検査結果に基づき選択します。次の
   選択肢から適切なものを選びます。
   ① 上皮内
   ② 限局
   ③ 領域リンパ節転移
   ④ 隣接臓器浸潤
   ⑤ 遠隔転移
   ⑥ 該当せず
     血液や骨髄のがんの場合、進展度は存在しないので、これを選択します。
   ⑦ 不明
     原発巣が不明な場合、剖検発見の場合、他施設ですでに治療が終了している場合には、これを選択しま
     す。
 4. 進展度・術後病理学的は、初回治療として切除術を行った後で、切除術によって得られた摘出標本の病理診
   断の結果を加味して判断します。次の選択肢から適切なものを選びます。
   ① 上皮内
   ② 限局
   ③ 領域リンパ節転移
   ④ 隣接臓器浸潤
   ⑤ 遠隔転移
   ⑥ 手術なし又は術前治療後
     (自施設で)切除術を行わなかった場合、切除術を行う前に化学療法や放射線療法などが行われた場合
     に選択します。
   ⑦ 該当せず
     血液や骨髄のがんの場合、進展度は存在しないので、これを選択します。
   ⑧ 不明
     自施設で切除術を行い原発巣が不明な場合、自施設で切除術を行ったが進展度の区分の判断に必要な情
     報がない場合には、これを選択します。
 5. 進展度・治療前と進展度・術後病理学的の双方に共通するルールとして、次のようなルールがあります。
   ① 複数の区分に該当する所見がある場合、より進んでいる方の区分を選択する。
   ② その区分に該当するかどうか疑いがあるとき(医師が「疑い」としているとき)は、進展度の低いほう
     の区分とする。
   ③ 進展度は、その後、がんが進行し、転移や再発が見られたからといって、その情報をもとに変更しな
     い。
 6. 死体解剖によってがんと診断された場合、死体解剖で得られた進行度の情報は、進展度・術後病理学的に反
   映させる。
 7. 進展度の他に、進行度の分類として、TNM分類がありますが、これは主に臨床現場の医師に用いられている
   分類です。UICC(国際対がん連合)が定めたTNM分類や、学会や研究会が定めた癌取扱い規約のTNM分類
   などがあり、ステージ1からステージ4などに区分されます。臨床現場の医師は、癌取扱い規約のTNM分類を
   利用することが多く、病理医は病理報告書にUICCのTNM分類を記載することが多いようです。しかし、病
   理報告書には、臨床の医師からのリクエストによって、癌取扱い規約のTNM分類が記載されることもありま
   す。
 8. UICCによるTNM分類と進展度の対応表を、国立がん研究センターが作成・公表していますので、適宜ご活
   用ください。
   「進展度、UICC TNM分類対応表(72部位、UICC第8版準拠)」
   https://ganjoho.jp/med_pro/cancer_control/can_reg/hospital/manual.html
Q6-12)進展度について、次のような場合はどうしたらよいですか?
 1. 診療録に「胃がん(進行がん)」とだけ記載があり、詳細は不明な場合…「不明」を選択
 2. 診療録に「膵がん ステージ4」とだけ記載があり、詳細は不明な場合…「遠隔転移」を選択(UICC、癌取
   扱い規約いずれもTNM分類のステージ4は遠隔転移にあてはまるため)
 3. 卵巣境界悪性腫瘍の症例で、進展度についての記載がない場合…病理結果にそれ以上の情報がないときは、
   進展度・治療前の情報も加味して選択
 4. 大腸がんを内視鏡的に切除した症例で、摘出標本の病理検査で断端陽性のため、追加切除が必要となり、他
   施設へ紹介した場合…自施設の病理診断の結果を確認して選択
 5. 大腸がんで、横行結腸と直腸が同時に発見され、肺転移も確認された症例。横行結腸がんは進行がんで、直
   腸がんは粘膜がんの診断。このときの進展度は?…肺転移がどちらのがんと関連があるか医師に確認。確認
   がとれないときは、より進んでいるがんと関連しているとみなして、横行結腸がんは「遠隔転移」、直腸が
   んは「上皮内」を選択