グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  研究所 >  トピックス >  胆管癌進展に関与する脂肪酸代謝酵素の新たな機能を発見(がん幹細胞研究部)

胆管癌進展に関与する脂肪酸代謝酵素の新たな機能を発見(がん幹細胞研究部)


脂質の代謝異常は、数多くの疾患に関わっており、がんも例外ではありません。私たちは、胆管癌において、脂肪酸を代謝するFADS2遺伝子(fatty acid desaturase 2)がトリグリセリド量の制御に関与し、癌を進展させることを明らかにしました。
一般的にFADS2は、抗酸化作用などを示す不飽和脂肪酸を合成します。しかし、胆管癌細胞では、FADS2の機能を阻害しても不飽和脂肪酸の量比に変化はなく、代わりに、トリグリセリド量が顕著に減少することがわかりました (図)。トリグリセリドは通常、細胞内に貯蔵されエネルギー源として利用されます。胆管癌細胞でFADS2の機能を阻害すると、ほかにも酸素消費量の低下や、細胞増殖能、遊走能の低下が認められました。このことから、FADS2の機能阻害による、トリグリセリドといったエネルギー源の減少を起点に、ATP産生に必要な酸素消費の低下、さらには増殖や遊走といった細胞機能の抑制が起きると考えられました。さらに、FADS2の機能を抑制すると、免疫不全マウス皮下における腫瘍増大が抑制され、FADS2は胆管癌の腫瘍形成に寄与することが示されました。
以上本研究では、FADS2はトリグリセリド量の調節に関与し、胆管癌細胞の遊走や腫瘍増大に寄与することがわかりました。不飽和脂肪酸の産生を介さずに、FADS2がどのような機構でトリグリセリド量を調節するかについては、さらなる解析が必要です。今後研究を進めることで、脂質による腫瘍進展制御の新たな機構の発見と、治療への応用が期待されます。

図: 本研究のまとめ。

図: 本研究のまとめ。

謝辞
この研究は九州大学 生体防御医学研究所附属 高深度オミクスサイエンスセンター メタボロミクス (馬場) 研究室との共同研究で行われました。
発表論文
Hasegawa K. and Fujimori H., et al., Delta-6 desaturase FADS2 is a tumor-promoting factor in cholangiocarcinoma. Cancer Science 2024. https://doi.org/10.1111/cas.16306