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現在の研究項目


1.免疫系ーがん組織におけるインターフェイスを標的としたがん治療の研究

肺がんや悪性黒色腫をはじめとする多くの腫瘍細胞は、抑制性分子(PD-L1, B7-1など)を発現しています。抑制性分子はCD8+細胞傷害性T細胞に対して強力な抑制性シグナルを送ることで、抗腫瘍免疫による攻撃から回避していると考えられます。実際に肺がんや悪性黒色腫では、PD-L1・PD-1 (PD-L1に対するT細胞上のレセプター)、B7-1・CTLA-4 (B7-1に対するT細胞上のレセプター)の各免疫チェックポイントを阻害する抗体を投与することにより、劇的な効果を発揮する症例があることが報告されました。がんは、「過剰な免疫反応を抑える仕組み」=「免疫チェックポイント」を利用して、巧妙に免疫系から逃れていたのです。最近の研究データによれば、免疫チェックポイントの打破による抗腫瘍免疫の増強療法が、がんに対す有望なアプローチであることが強く示唆されています。

多くのがん組織にはCTLを始めとする免疫系細胞が浸潤していますが、免疫チェックポイント制御により抗腫瘍免疫発動が抑制されています。残念なことに、CD8陽性リンパ球(CTL)が腫瘍内に全く侵入していないがん症例では、このような免疫チェックポイント療法はほとんど無効とされています。そこで、私たちは腫瘍に浸潤した免疫系細胞を詳細に解析して、CTL以外の新たな細胞に着目しています。骨髄由来のマクロファージや好中球等の免疫系細胞は腫瘍内に比較的多く浸潤していますが、多くは腫瘍促進を補助している可能性が報告されています。さらに、自然リンパ球やγδT細胞は、腫瘍を支持していることが明らかになってきました。私たちは、これらの新しい細胞グループに焦点を当てて、システムとしての腫瘍組織を捉えなおすことで、新たな「がん免疫療法」を樹立することを目指しています。

2.がん微小環境を標的としたがん治療の研究開発

がん組織には腫瘍細胞だけではなく、間質細胞・血管・免疫系細胞などが含まれており、がんの成長を支えています。がんはこれらの支持組織細胞に対して、サイトカインやエクソソーム(Exosome)などを分泌し、自分にとって都合のよい環境を作っていると考えられます。VEGFやPDGFなどの増殖因子、および炎症関連サイトカインは、血管や免疫細胞を活性化するのみならず、これらの前駆細胞(Progenitor)を腫瘍組織にリクルートして、腫瘍支持組織を構築しています。私たちは、がん組織においてさかんに分泌される機能分子に着目し、がんの悪性化における役割を解析しています。これらの機能分子のなかには、1)がん細胞自身の分裂増殖を制御する分子グループ、2)周辺細胞に分化誘導や免疫抑制効果を与えるグループ、の2群が存在します。最近になって、私たちはこれら2つの機能を兼ねる第3の分子グループを見出しました。細胞株と誘導型肺がん発症モデルマウスを用いて、第3の分子グループの果たす役割を解析し、新たな治療標的として利用できるか解析しています。さらに、これら分子グループの中には、がんの診断マーカーとして有望な分子が含まれている可能性が高いと予想されます。私たちは、基礎的研究を診断に役立てる開発も重要であると考えています。