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がん先進治療開発研究部


研究員構成

田中 伸幸 部長
東北大学医学系研究科連携講座 がん病態学分野 教授
小鎌 直子 主任研究員
長島 隆一 研究技師
西川路 武人 研究員
Tareg Omer Mohammed 博士課程
橘 周作 博士課程
新藤 剛 博士課程
泉山 慶子 技術員
小齋 仁美 技術員

研究紹介

がん治療はいま新たな時代を迎えつつあります。PD-1/PD-L1やCTLA-4等の免疫チェックポイントを標的とした抗体投与は、がん治療のブレークスルーとして世界中の注目を浴びており、まさにがん免疫の時代が到来しました。

これまでのがん研究では、細胞株やゲノムを対象とした研究が先行し、多大な成功を収めてきました。しかしながら、生体内で私たちを苦しめる「生きたがん」は、がん組織の周辺を取り巻く微小環境のなかで生存・増殖を続けており、さらに私たちの体には、腫瘍を攻撃する免疫(抗腫瘍免疫)が備わっています。一方、腫瘍は過酷な環境(低酸素環境など)に耐え、抗腫瘍免疫から逃避(エスケープ)する特殊な能力を獲得しているはずです。効果的ながん治療法開発とは、単にがん細胞を標的とするだけではなく、がんを生体システムにおける一臓器として捉え、撲滅に導くことが必要です。免疫系とがん組織、周辺組織とがん組織、といった「複雑系」同士の相互作用という観点から、がん組織の生存戦略を再発見し解析することが、「本当に効果的な」がん治療法の開発に必須と考えられています。

私たちの研究室では、がん免疫や微小環境に耐える「がんの特性」に着目し、研究を行っています。特に、1)腫瘍増殖を支援する新たな免疫系細胞を同定する研究、および、2)腫瘍増殖と転移を制御している新たな分子を発見する研究、の2本柱からなる研究開発を展開しています。遺伝子改変モデルマウスや腫瘍細胞の移植系を用いた実験系を用いて、生体内での解析に主眼を置いています。さらに、「ベンチからベッドへ」を合言葉に、これらの基礎研究を臨床応用できることを目標に、チャレンジしています。

現在の研究項目

1.免疫系ーがん組織におけるインターフェイスを標的としたがん治療の研究

肺がんや悪性黒色腫をはじめとする多くの腫瘍細胞は、抑制性分子(PD-L1, B7-1など)を発現しています。抑制性分子はCD8+細胞傷害性T細胞に対して強力な抑制性シグナルを送ることで、抗腫瘍免疫による攻撃から回避していると考えられます。実際に肺がんや悪性黒色腫では、PD-L1・PD-1 (PD-L1に対するT細胞上のレセプター)、B7-1・CTLA-4 (B7-1に対するT細胞上のレセプター)の各免疫チェックポイントを阻害する抗体を投与することにより、劇的な効果を発揮する症例があることが報告されました。がんは、「過剰な免疫反応を抑える仕組み」=「免疫チェックポイント」を利用して、巧妙に免疫系から逃れていたのです。最近の研究データによれば、免疫チェックポイントの打破による抗腫瘍免疫の増強療法が、がんに対す有望なアプローチであることが強く示唆されています。

多くのがん組織にはCTLを始めとする免疫系細胞が浸潤していますが、免疫チェックポイント制御により抗腫瘍免疫発動が抑制されています。残念なことに、CD8陽性リンパ球(CTL)が腫瘍内に全く侵入していないがん症例では、このような免疫チェックポイント療法はほとんど無効とされています。そこで、私たちは腫瘍に浸潤した免疫系細胞を詳細に解析して、CTL以外の新たな細胞に着目しています。骨髄由来のマクロファージや好中球等の免疫系細胞は腫瘍内に比較的多く浸潤していますが、多くは腫瘍促進を補助している可能性が報告されています。さらに、自然リンパ球やγδT細胞は、腫瘍を支持していることが明らかになってきました。私たちは、これらの新しい細胞グループに焦点を当てて、システムとしての腫瘍組織を捉えなおすことで、新たな「がん免疫療法」を樹立することを目指しています。

2.がん微小環境を標的としたがん治療の研究開発

がん組織には腫瘍細胞だけではなく、間質細胞・血管・免疫系細胞などが含まれており、がんの成長を支えています。がんはこれらの支持組織細胞に対して、サイトカインやエクソソーム(Exosome)などを分泌し、自分にとって都合のよい環境を作っていると考えられます。VEGFやPDGFなどの増殖因子、および炎症関連サイトカインは、血管や免疫細胞を活性化するのみならず、これらの前駆細胞(Progenitor)を腫瘍組織にリクルートして、腫瘍支持組織を構築しています。私たちは、がん組織においてさかんに分泌される機能分子に着目し、がんの悪性化における役割を解析しています。これらの機能分子のなかには、1)がん細胞自身の分裂増殖を制御する分子グループ、2)周辺細胞に分化誘導や免疫抑制効果を与えるグループ、の2群が存在します。最近になって、私たちはこれら2つの機能を兼ねる第3の分子グループを見出しました。細胞株と誘導型肺がん発症モデルマウスを用いて、第3の分子グループの果たす役割を解析し、新たな治療標的として利用できるか解析しています。さらに、これら分子グループの中には、がんの診断マーカーとして有望な分子が含まれている可能性が高いと予想されます。私たちは、基礎的研究を診断に役立てる開発も重要であると考えています。