グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム >  研究所 >  研究活動紹介 >  がん幹細胞研究部

がん幹細胞研究部


研究員構成

玉井 恵一 部長
東北大学医学系研究科連携講座 がん幹細胞学分野 教授
望月 麻衣 研究員
渋谷 莉恵 技術員
森田 真吉 博士課程(東北大学耳鼻咽喉科)
西條 聡 博士課程(東北大学耳鼻咽喉科)
藤井 慶太郎 博士課程(頭頸科)
阪田 康聖 博士課程
虻江 誠 共同研究員(消化器内科)
佐藤 賢一 客員部長
東北医科薬科大学 内科学第二 教授

研究紹介

近年の研究から、がんの転移や抗がん剤耐性はがん幹細胞といわれるがん細胞の中でもごくわずか(数%程度)の細胞によってもたらされていることが示唆されています。また、がん幹細胞として選別される細胞は上皮-間葉形質転換: Epithelial to mesenchymal transition (EMT) が誘導されている状態にあることが明らかとなっています。がん細胞は酸素が充分に存在する環境下でも解糖系によってエネルギーを得ることがWarbrug効果として知られています。一方、がん幹細胞は通常のがん細胞と異なり、解糖系ではなくTCA回路を用いた代謝を好むことが最近の研究によって推測されています。当研究室では、このがんの根源ともいえるがん幹細胞の性質ががんの悪性度を増強することに着目し研究を行っています。
また、当センターTissue bankには臨床各科の協力により、各種のがん検体が2,000検体以上、研究に使用できる状態で保管されています。基礎研究の結果を即座に臨床検体で確認することが可能です。私たちは、各種がんとその正常部における様々な分子の発現差を解析し、臨床データと比較することによってがんの悪性化に関与する分子を同定することを試みています。

豊富な検体と臨床データを融合させることが可能であり、様々なニーズに合わせた研究が行えることが当研究室の特徴です。

現在の研究項目

1.がん幹細胞に関する研究

がん幹細胞「仮説」は、これまで多くの研究でその存在が示されてきましたが、がん幹細胞を決定づける因子に関してはほとんどの点で不明なままです。

私たちは、胆道癌を材料にしたがん幹細胞を決定づける遺伝子の探索により、CD274(PD-L1)を見いだしました。更に、このCD274が発現低下しているがん細胞が、様々ながん幹細胞の特徴(造腫瘍能・静止期・ALDH活性等)を備えていることを明らかにしました。また、CD274の発現を人為的に低下させても、がん幹細胞様に形質が変化します。このことから、がん幹細胞の運命を決定づける上で、この分子が何らかの鍵を握っていると考えられます。(Tamai, et al. 2014)

現在この分子メカニズムを明らかにするために、さらに鍵となる遺伝子を探索し、解析を行っています。

マウスに移植した胆管癌の免疫染色の画像

図:マウスに移植した胆管癌の免疫染色。CD274高発現細胞(茶)は、増殖能が高く(赤:Ki67陽性)、CD274低発現細胞はその逆である(増殖能が低い)ことが分かります。(Tamai, et al. Cancer Science, 2014)

2.がんの悪性化に関わる分子に関する研究

Non-coding RNA Hotairのがん悪性化への関与

長鎖non-coding RNAであるHotairが様々ながんの悪性化に関与することが報告されています。私たちは、肺癌と胃癌におけるHotairの役割について検討をおこなってきました。当センターTissue bankに登録された非小細胞肺癌82例でHotairの発現を検索すると、17例に高い発現を認めました。Hotair高発現例は転移を示す悪性例が多く、術後無再発期間が有意に短縮していることが明らかになりました。さらに、肺癌細胞株にHotairを強制発現させると、肺癌細胞の移動能が亢進しました(Nakagawa T, et al. 2013)。非小細胞肺癌同様に、tissue bank登録胃癌検体68例においてHotairの発現を解析すると、胃癌では正常部に比べ癌部でHotair発現の上昇がみられました。また、Hotairの発現は低分化型胃癌のリンパ節転移および、術後生命予後の短縮と関連していました。Hotairを強制発現させた胃癌細胞は足場非依存性増殖が増強し、免疫不全マウスに尾静注すると、Hotairを発現していない胃癌細胞に比べ有意に多くの肝転移を認めるようになりました。一方、shRNAを導入しHotair発現を抑制した胃癌細胞株を腹腔内に投与すると、発現を抑えていない胃癌細胞に比べ腹膜播種の数が有意に減少しました(Endo H, et al. 2013)。これらのことから、Hotairは細胞の移動能や転移能を増強し、肺癌や胃癌の悪性化に関与していることがわかりました。現在も、私たちはHotairが転移能を亢進する分子機序について研究を継続しています。

胃癌細胞を注入し8週間経過したマウスの解剖像

図:Hotairを強制発現させた胃癌細胞(MKN74)を免疫不全マウスの尾静脈より注入した8週後の解剖像です。多発肝転移が確認されます。Endo H, et al. PloS ONE 8: e77070, 2013.

3.マイクロRNAのがん悪性化への関与

私たちは、膵癌細胞、非浸潤膵腫瘍細胞をマイクロダイゼクションによって分離してマイクロRNAの発現プロファイルをマイクロRNAアレイにて比較しました(Hamada S, et al. 2012, 2013,2014)。膵癌細胞において非浸潤膵腫瘍細胞にくらべ発現が上昇していた2つのマイクロRNA(miR-21、miR-483-3p)に着目しました。膵癌患者32例、健常者30例および膵管内乳頭粘液腫瘍(IPMN)患者12例の血漿を材料に、これら2つのマイクロRNAが血漿中でも測定可能かどうか、定量的RT-PCRを用いて検討しました。その結果、検索した全血漿中でmiR-21とmiR-483-3pの発現が確認できました。miR-483-3pの発現は膵癌群において健常群およびIPMN群とくらべ有意に上昇していることがわかりました。同様にmiR-21の発現値は、膵癌群において健常者に比べ有意に上昇していましたが、IPMNとの比較では有意差を認めませんでした。miR-21の発現値はStage、リンパ節および肝転移と関連していました。さらに、miR-21高発現膵癌例は低発現例に比べ有意に予後不良なことが明らかとなりました。これらのことから、血漿中で高発現しているmiR-483-3pは膵癌の浸潤性に、 miR-21は膵癌の転移に、それぞれ関与することで悪性度を増強している可能性が示唆されました (Abue M, et al. 2015)。

血漿中のmiR-483-3p発現値の説明図

血漿中のmiR-21発現値の説明図

図:血漿中のmiR-483-3pとmiR-21の発現値の比較。miR483-3pは健常群、IPMN群と比べ膵癌群で有意に発現が高く、miR-21の発現は膵癌、PMN群で健常群と比べ有意に高いことがわかります。Abue M, et al. Int J Cancer 46: 539-547, 2015

4.代謝関連分子PKM2のがん悪性化へ関与

私たちは、当研究所薬物療法研究部との共同研究で解糖系に関与する酵素ピルビン酸キナーゼtypeM2 (PKM2)とがん悪性化との関連を検討しています。現在まで膵癌や胃癌において正常部にくらべPKM2が高発現していることを明らかにしており、悪性化への関与について検討中です。