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研究テーマ (専門家向け)


概要

近年の研究から、がん組織中には複数の異なった性格を持つ癌細胞によってヘテロに構成されていることが明らかになっています。この中には、腫瘍再構築能や抗癌剤耐性能の高い治療抵抗性細胞(がん幹細胞)が含まれ、腫瘍組織全体ではなく個々の癌細胞の特性に合わせた治療が必要だと考えられます。当研究室では、このようながん幹細胞に着目し、これまで知られていなかった分子経路を明らかにしようと研究を進めています。
そのために、臨床各科の協力によって手術検体をそのまま免疫不全マウスに移植して株化するpatient-derived xenograftを積極的に利用して入ります。また、当センターTissue bankには各種のがん検体が2,000検体以上、研究に使用できる状態で保管されています。基礎研究の結果を即座に臨床検体で確認することが可能です。私たちは、各種がんとその正常部における様々な分子の発現差を解析し、臨床データと比較することによってがんの悪性化に関与する分子を同定することを試みています。

豊富な検体と臨床データを融合させることが可能であり、様々なニーズに合わせた研究が行えることが当研究室の特徴です。

がん幹細胞に関する研究

扁平上皮癌は、現在でも治療標的の乏しい癌種です。私たちは、この扁平上皮癌に関してがん幹細胞の研究を進めたところ、CD271が扁平上皮癌のがん幹細胞に高発現していることを見いだしました(Imai, et al. PloS One, 2013)。このCD271は、扁平上皮癌、特に下咽頭癌や肺扁平上皮癌の造腫瘍能や増殖能を決定的に制御していることが分かりました(Mochizuki, et al. Sci. Rep., 2016, Mochizuki, et al. Lab Invest., 2019)。このCD271に対する治療抗体を作成したところ、腫瘍抑制効果があることもわかりました(Morita, et al. Cancer Lett., 2019)。

また私たちは、胆道癌を材料にしたがん幹細胞を決定づける遺伝子の探索により、CD274(PD-L1)を見いだしました。更に、このCD274が発現低下しているがん細胞が、様々ながん幹細胞の特徴(造腫瘍能・静止期・ALDH活性等)を備えていることを明らかにしました。(Tamai, et al. Cancer Sci., 2014)また、同様に静止期がん幹細胞に重要な分子BEX2を見いだし、報告しました。(Tamai, et al. Sci Rep, 2020)

現在これらの分子メカニズムを明らかにするために、さらに鍵となる分子を探索し、解析を行っています。


図:下咽頭癌の免疫染色。CD271高発現細胞(緑)は、がん組織の一部に高発現し、増殖能が高い(赤:Ki67陽性)ことが分かります。(Mochizuki, et al. Sci Rep, 2016)