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食事中のニコチン酸制限が、小細胞肺がん治療薬の効果を高める<br>(がん薬物療法研究部)


小細胞肺がんの「NAD合成の逃げ道」をふさぐ新たな治療戦略

研究の概要 小細胞肺がんは、増殖が速く、抗がん剤治療(化学療法)後に再発しやすい難治性のがんです。今回私たちは、がん細胞の生存に必要な物質「NAD」の合成を阻害するNAMPT阻害薬と、ニコチン酸(ビタミンB3の一種)を含まない食事を組み合わせることで、小細胞肺がんの増殖を強く抑えられることをマウスモデルで明らかにしました。これは、薬剤でNADの主要な合成経路を遮断するとともに、食事由来の成分を利用した別の合成経路もふさぐ治療法です(図A)。
ポイント 患者さんの腫瘍を移植した4種類のモデルすべてで腫瘍が縮小し、化学療法が効きにくくなった腫瘍のモデルでも治療効果が認められました。また、小細胞肺がん細胞を移植した5種類のモデルすべてで、治療前と比べて腫瘍が縮小しました(図B)。このうち4種類では、化学療法よりも強い治療効果がみられ、残る1種類でも同程度の効果が認められました。治療により一時的な白血球減少がみられましたが、体重減少や血小板減少は従来の化学療法よりも軽度でした。

意義と今後の展望 本研究は、薬剤でNADの主要な合成経路を阻害すると同時に、食事由来の「逃げ道」をふさぐという新たな治療戦略を示しました。今後は安全性をさらに検証するとともに、食事制限に代わって、この逃げ道を薬剤で遮断する方法の開発も目指します。なお、本成果はマウスを用いた研究であり、患者さんにビタミンB3の摂取制限を勧めるものではありません。
論文情報 “Nicotinic acid restriction enhances the therapeutic benefit of NAMPT inhibition in small-cell lung cancer models”
Cancer Science, 2026. DOI: 10.1111/cas.70486
筆頭著者: 鶴見恭士, 責任著者: 田沼延公
宮城県立がんセンター研究所 がん薬物療法研究部/東北大学大学院医学系研究科 腫瘍生化学分野
(国立がん研究センター研究所、慶應義塾大学との共同研究です)
https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/cas.70486