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ホーム >  研究所 >  研究トピックス >  研究トピックス一覧 >  卵巣がんの転移を支える、鉄と硫黄の“微小部品” <br> (がん薬物療法研究部)

卵巣がんの転移を支える、鉄と硫黄の“微小部品” <br> (がん薬物療法研究部)


がんは「でき始め」と「育った後」で鉄-硫黄クラスターへの依存性が変わる

研究の概要 鉄硫黄クラスターは「鉄(Fe)」と「硫黄(S)」が組み合わさった微小な構造体で、ミトコンドリアでのエネルギー産生やDNAの複製・修復などを担う多くのタンパク質の働きに重要です(図A)。今回の研究で我々は、細胞内で「鉄-硫黄クラスター(以下、Fe-Sクラスター)」を作る際に働くFDX2というタンパク質が、がんの進行段階によって異なる役割を持つことを、マウスでの実験で明らかにしました。
ポイント 卵巣がん細胞でFDX2の働きを抑えると、腹膜播種(転移の一種)の進行が大きく抑えられることが分かりました(図B)。詳しく調べると、FDX2は、がんが新たな転移をする段階で特に重要であることが分かりました。一方、意外なことに、既に形成された腫瘍でFDX2の働きを失わせても、腫瘍増大にはあまり影響がありませんでした。理由を調べたところ、腫瘍内でよく見られる“酸素濃度の低い環境”では、FDX2欠乏に伴うFe-Sクラスター生合成異常の影響が緩和される可能性が示されました。

意義と今後の展望 今回の成果は、がん細胞の代謝上の弱点が、病気の進行段階や周囲の酸素環境によって変化することを示しています。特に、腫瘍形成や転移の初期にはFe-Sクラスター合成への依存性が高い可能性があり、新しい治療標的の探索につながります。一方で、実験は特定の卵巣がん細胞を用いた移植モデルが中心であり、他のがん種や患者さんの腫瘍でも同じ仕組みが働くか、今後の検証が必要です。
論文情報 “The iron-sulfur cluster assembly factor FDX2 is required for tumor initiation but not for growth of established tumors in transplantation models,”
Journal of Biological Chemistry, 302 (7): 113200. 2026.
筆頭著者: 橋本栄文, 責任著者: 田沼延公
宮城県立がんセンター研究所 がん薬物療法研究部/東北大学大学院医学系研究科 腫瘍生化学分野(東北大学医学部産婦人科学分野との共同研究です)
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0021925826020727