食事中のニコチン酸を減らすと、急性骨髄性白血病に対するNAMPT阻害薬の効果が高まる<br>(がん薬物療法研究部)
白血病細胞の「NADを補う逃げ道」を断つ新たな治療戦略
研究の概要 急性骨髄性白血病(AML)は、進行が速く、再発や治療抵抗性が問題となる難治性の血液がんです。今回、私たちは、AML治療薬として開発が進められているNAMPT阻害薬の効果が、食事由来のニコチン酸によって弱まってしまう可能性を明らかにしました。マウスの実験では、ニコチン酸を除いた食事とNAMPT阻害薬を組み合わせることで抗腫瘍効果が高まり、マウス生存期間の明らかな延長がみとめられました。本成果は、米国癌学会誌 Cancer Research Communications誌にて公表されます。

ポイント NAMPTは、生命活動に必要な物質「NAD」を作る重要な酵素です。AMLはNAMPTへの依存性が高いことが知られ、NAMPT阻害薬の開発が進められています。一方、私たちの体内では、食事中のニコチン酸から「ニコチン酸リボシド(NAR)」が作られています。このNARに、NAD生産の下支えを通じて、NAMPT阻害薬の効果を打ち消す作用があることが分かりました。AML細胞を移植したマウスにNAMPT阻害薬を投与し、通常食とニコチン酸を含まない食事を与えて比較しました。その結果、ニコチン酸を制限した群では腫瘍の増殖が強く抑えられ、生存期間も延長しました。一方、副作用として、一時的な血球減少がみられ、特に好中球の減少に注意が必要であることも分かりました。

意義と今後の展望 今回の成果は、薬だけでなく、体内の栄養・代謝環境を整えることで治療効果を高めるという新たな治療戦略につながる可能性を示しています。なお、本成果はマウスを用いた研究であり、患者さんへの応用には、安全性や食事制限の方法、薬剤投与条件などをさらに検討する必要があります。
論文情報 “Nicotinic acid restriction potentiates NAMPT inhibition in acute myeloid leukemia xenograft models”
Cancer Research Communications, 2026. DOI: 10.1158/2767-9764.CRC-26-0274
Cancer Research Communications, 2026. DOI: 10.1158/2767-9764.CRC-26-0274
筆頭著者: 鶴見恭士, 責任著者: 田沼延公
宮城県立がんセンター研究所 がん薬物療法研究部/東北大学大学院医学系研究科 腫瘍生化学分野
(京都大学、慶応義塾大学との共同研究です)
https://doi.org/10.1158/2767-9764.CRC-26-0274
宮城県立がんセンター研究所 がん薬物療法研究部/東北大学大学院医学系研究科 腫瘍生化学分野
(京都大学、慶応義塾大学との共同研究です)
https://doi.org/10.1158/2767-9764.CRC-26-0274

