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研究テーマ紹介 (専門家向け)


がんは、体細胞のゲノムの変異によって発症する疾患である。様々な遺伝子変異が蓄積されることにより、細胞の悪性化が惹起される。我々の研究室は2つの研究課題がある。一つ目がNGSを用いたがん特異的ゲノム変異の網羅的検出技術の臨床応用であり、二つ目が発がんの分子機構の解明である。一本目の柱である臨床応用については、宮城県立がんセンター病院の臨床医と幅広く連携し、家族性がんの原因変異の同定、がんの再発のリキッドバイオプシーでの検出、包括的ゲノムプロファイリングデータの解釈など、臨床に直結した研究を行っている。また、臨床検体でのDNA異常の研究は、突然変異誘発の分子メカニズムを反映するがん細胞におけるMutation Signature解析などに焦点をあてている。二本目の柱では有糸分裂における染色体分離と、臨床がん検体において観察されるDNA修復不全に関するものである。染色体分離の問題では、染色体分離の引き金となるセパラーゼと呼ばれる酵素に着目している。有糸分裂時にこの酵素の働きが阻害されると、染色体の分離不全が発生し、ゲノム不安定性の原因の1つとなることが知られている。

がんゲノム医療の支援のための研究開発

分子標的薬剤の開発の進展と、次世代シークエンサーによるがんのゲノム診断技術の進歩によって、がんを惹起するドライバー変異に対して適切な抗がん剤を投与すればこれまで経験されなかったような顕著な治療効果が得られる症例が出現してきた。また、近年注目されている免疫チェックポイント療法も、がんのゲノム異常が高度に蓄積している症例に有効性が高いことも知られてきている。一方で、ゲノム解析は高額であるにも関わらず、必ずしもすべての患者に福音をもたらすわけではない。例えば上記のような奏効する分子標的薬剤を選択可能な症例は2018年の時点で全体の1割から4割と見積もられており、残りの患者には現在でもゲノム解析の恩恵があるとは言いにくい。保険収載され、日常的にがん遺伝子の変異情報を臨床に有効活用していくために、当研究室では以下の取り組みを実施する。

1)リキッドバイオプシー(がん組織でなく血液でのがんゲノム診断)の研究開発

2)遺伝子パネル検査結果の分析や解釈のための知識や経験を持つ生命情報科学技術の開発

3)遺伝子パネル検査結果のさらなる活用のためのデータベース整備と新規分析技術の開発

1)はオーダーメイドの腫瘍マーカーとして樹立される。結果として組織生検などの患者への負担の軽減や遠隔地から画像診断を受けるために来院する手間などが省けるなど、患者への利益の大きな技術開発である。2)は日進月歩の化学療法の進歩を踏まえ、患者のがんゲノム情報に基づいて遅滞なく新規治験などへの参加勧奨などを実施することが可能になる。3)は今後再発など、患者のフォローアップに際してゲノム情報が活用できる可能性を探索するために必要な取り組みである。これらによって、がんゲノム診断に際し、適切な薬剤の見つからない患者へも何らかの恩恵が得られることが期待される。

カーニー複合責任変異の同定のサマリー

カーニー複合責任変異の同定のサマリー